罪で結ぶ絆 2

迷い ページ8

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”俺、凄く嬉しくてさ、俺もミツのこと
　本当のお兄ちゃんみたいに思っていた
　から”




始めて生じた心の迷い……。





　自分がこれからしようとしていること
は、裕太まで傷つけることになるのでは
ないかと思うと急に怖くなった。



けれど――

　色々知ってしまった今、諦めるなんて
できるはずもなくて。

　今更復讐なんてして、自分が辛くなる
だけということも、復讐からは何も生ま
れないということも

そんな在り来りの言葉では、言い尽くせ
ない感情が私の心の中に渦を巻いていた。


ヒヨリの書き残した一枚の紙……


どんな思いでゴミ箱に捨てたのか？辛い
気持ちを誰にも話さず、たった一枚の紙
にだけ書き綴って捨てたんだ。




光の消えた瞳

バラ色だった頬は冷たい蝋のようで

可愛らしい唇はもう何も語らない




気づいたら、膝の上で両手をぎゅっと握
っていた。部屋は寒かったけれど、じっ
とりと掌が汗ばんでいた。




報復したい……。

その気持ちの方が強かった。

そのためになら私は何にだってなれる。







「ねぇ、裕太はその子とどうやって知り
　合ったの？」

「うちの店のお客だったんだよ」

「え……？お酒を呑んでたってこと？」

「お酒？弱いみたいで、いつもノンアル
　コールカクテルを作ってあげてたよ。
　何でそんなこと訊くの？」



裕太は不思議そうな顔をして私を見つめ
た。


「え？あ……の、別に深い意味はないよ」

「ふーん……」

「ただのお客様だったの？」

「まぁ……色々後からわかったこともあ
　るんだけど……玲さんに話すような事
　じゃないから」



言葉を選ぶかのようにゆっくりとそれだ
け言うと、少しだけ眉間に皺を寄せた。

ヒヨリがなぜ、バーに出入りしていたの
かは言いたくなさそうで、結局お茶を濁
されてしまった。





「裕太、今日は包帯だけ巻いておこう」

「うん」


すっかり血が止まったと思っていたけれ
ど、包帯を巻いているとうっすらと血が
滲んでくる。

ヒリヒリと痛いのか、裕太は顔を顰めた。




「シェーカー振れないね」

「いや大丈夫。こんくらい何でもない」

「裕太……」



「玲さん……さっきも言ったけど……
この事は絶対にミツに言わないでよ」

「でもっ」






「俺、実は今日逃げてきちゃったんだ」

「え？」




「きっと……怒ってると思う」

「……っ」




「ミツに絶対に迷惑かけたくないんだ。
自分で何とかするから。――約束して」







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