罪で結ぶ絆 2

現実 ページ7

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　いつもは自由な雰囲気で、ふわふわと
した印象の裕太だったけれど、私の前で
目を潤ませて必死で泣くまいとしている

　そんな裕太が痛々しくて、だけど私に
はどうしようも出来なくて。何て声をか
けてあげたらいいのかわからなかった。



こんな仕事辞めちゃえば？

　
　喉まで出た無責任な言葉を飲み込んだ
きっと何か事情があるんだね。夜の世界
に生きる人達は、大なり小なり、皆何か
を抱えている。

裕太のように若い男の子でも、やっぱり
どこか退廃的で、陽の光を浴びたら消え
てしまうんじゃないかとさえ思う。


　もちろん水商売が天職のような人もい
るけれど、裕太がそうだとはとても思え
なかったから。





「ごめん……玲さんはお客様なのにこん
　な話して」

「大丈夫だよ……」

「前にも話したよね？俺の好きだった子
　に何となく重なるんだわ。だからつい
　心を許しちゃうっていうか……」



　裕太は少しだけ笑うと、もう一度鼻を
すすった。



「ううん、いいの。話すと楽になるなら
　聞くから……ねえ、その子は裕太の
　彼女だったわけじゃないの？」

「え？」

「だってそう思うでしょ？」



「あーそうだよね……ヒヨリには……
　その子には他に好きな人がいたんだよ
　だから俺の完全な片想い」


そう言いゆっくりと目を伏せた。




「……」


裕太ははっきり”ヒヨリ”と言った。





ドッ、ドッ、ドッ

心臓が大きく鼓動を刻み始める。





　名前を出しても私にはわからないと思
ったのか、すぐに“その子”と言い直し
た。

　ヒヨリだということを確信してはいた
けれど、その名前を実際に耳で聞いてみ
れば、まるで自分の妹ではないように感
じた。



他に好きな人か……



ひろの顔が脳裏に浮かんだ。
目尻に皺を寄せた親しみやすい笑顔が。





「でも凄く良い子で、大好きだった」

「……」


「どうしたの？玲さん大丈夫？」

「え……？あ、大丈夫だよっ」



　裕太の純粋な気持ちを利用して、ヒヨ
リのことを聞き出そうとしている自分は
なんて酷く小聡明い人間なんだろう。

　裕太を見れば、どこか懐かしそうに笑
みを浮かべてる。


ぎしっと、胸の奥が軋む音がした。






　ヒヨリがもうこの世にいないことを裕
太が知ったら？しかも、自らの手で命を
絶ったという現実を……。


　そして、ヒヨリを妊娠させた男がひろ
だと知ってしまったら？



裕太はどうなってしまうんだろう？








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