罪で結ぶ絆 2

兄弟の想い ページ6

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「ごめん、誘っておいて、気の利いた物
　なんて何にもないよ」

「何言ってるの、怪我人に何かしてもら
　おうなんて思ってないよ。裕太、手を
　見せて」

「うん」




　ずっと圧迫していたせいか、もう殆ど
血は止まっていた。傷を洗い、清潔なタ
オルでもう一度押さえていてもらう。




「玲さん、そこに紅茶あるから淹れてく
　れる？」

「わかった」




　お湯を沸かし、カップに紅茶を注いで
ローテーブルの上に置き、裕太と直角に
私も座った。

　紅茶の香りが鼻孔を擽る。一口啜ると
気持ちがすぅーっと落ち着いてきた。



「ありがとう、何だかやっと落ち着いた
　かも」

「もう、大丈夫？」

「うん……今日は、変なところ見られ
　ちゃったね。お客様なのにごめん」

「ううん。今日は前に話してくれたお
　客様と会ってたの？」




　一瞬訊くのを躊躇ったけれど、裕太か
ら話し出してくれたことで、もしかした
ら聞いてほしいのかと思った。



「そう」

「どうしてっ」



「ミツを守りたかったから……」

「ミツを？」




　私はこの時始めて、裕太のひろに対す
る深い想いを知った。

　裕太は頷くと、自分の掌をじっと見つ
め、ぽつりぽつりと話し出した。




「俺が始めて店に来た時に、仕事を色々
　教えてくれたのがミツで、凄く面倒見
　がいいんだよ。

　だから新人が入るたびに、教育係をさ
　せられる。

　こんな仕事してるけど、俺は人見知り
　だったからさ、店の皆と打ち解けるの
　も時間がかかったし

　今はもう何とも思わないけど、お客様
　と会うのも最初はしんどくて。

　そんな時、いつも俺を気遣ってくれた
　のがミツで、困ったことがあれば何で
　も相談しろって。

　よく焼肉屋に連れて行ってくれたよ。
　がっつり食えば元気出るぜって、ふふ
　そればっか。

　ボーイズクラブなんかで働いている奴
　はやっぱり皆わけありで、こんな仕事
　していると、時々頭がおかしくなりそ
　うになるけど

　ミツがいるから俺、どうにかやってこ
　れたんだ。

　俺は玉のこと本当の弟みたいに思って
　いるからって言ってくれたんだよね。

　玉がいるから自分も頑張れるって。俺
　を頼りにしてるって。

　俺、凄く嬉しくてさ、俺もミツのこと
　本当のお兄ちゃんみたいに思っていた
　から

　俺を庇って、ミツだけ酷い目に合わさ
　れんのもう耐えられない……」




　裕太はそこまで一気に話すと、ぐすり
と鼻をすすった。





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