罪で結ぶ絆 2

サルビアの花 ki ページ47

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この日は一日中、玲さんと一緒に過ごし
た。


「ひろ、目玉焼き三つだよね。はい」

「やったね、半熟！」

「お味噌汁たくさん作ったから」



テーブルにコトンとお椀を置き、柔らか
く微笑む玲さん。

誰かに朝飯を作ってもらうなんていつぶ
りだろう？玲さんがいるだけで、殺風景
なアパートの部屋が華やぐから不思議だ。

遅い朝食の後は、ベッドの中で何をする
でもなくたわいもない話をしたり、キス
しながらクスクスと笑いあったり、お互
いの心音を感じながら微睡んだり。

そんな時間が何よりも愛おしかった。

けれど……

玲さんが俺に笑いかける度、俺の下で可
愛く喘ぐ度、唇が愛を語る度、言いよう
のない罪悪感に苛まれる。

汚れた俺の過去。

何度も喉まで出しかけた言葉。
そして何度も飲み込んだ言葉。

言えなかった……

無垢な彼女を前にすると、どうしても言
えなかったんだ。




*




冷蔵庫の中に何も無かったから、夕方近
くなって、一緒に近所のスーパーに買い
物に出かけた。


外に出ると、夏の夕方特有の空気と、蜩(ひぐらし)
のもの悲しい声が聞こえてくる。



「この辺は暮らしやすそうね」

「あぁ、スーパーもあるけど商店街もあ
るし、暮らすにはめっちゃ便利だよ」

「ひろ、夕飯何食べたい？」

「肉」

「鉄板焼きにする？」

「いいねえ」


俺が笑うと、つられるように彼女も笑っ
た。玲さんの笑顔は俺の宝物。俺の過去
を知ったら、笑顔が消えるのではと思う
と怖かったが、いつか必ず告白しようと
思っていた。


いつか必ず……


色んな考えが頭の中で錯綜して、胃がキ
リキリと痛んだ。









駅近くのスーパーで、肉や野菜を買って
少し散歩しようと歩いていると、玲さん
が声を上げた。



「あっ、サルビアが咲いてる。懐かしい
なぁ」

「俺さ、小さい頃この花の蜜をチューチ
ュー吸ってた記憶あるよ」

「わかる！私もだよ。道端に咲いてて、
よく吸ってた……」




商店街の中にある小さな公園には、鮮や
かな真紅のサルビアが咲いていた。

燃え立つような、濃い鮮やかな真紅の花
が群れ咲く様子は、オシロイバナの想い
出とともに郷愁を誘う。

真っ赤な花の蜜を吸うAの唇に、ど
きどきしていたあの頃。


それは、もう戻らない懐かしい日々……




「ひろ？」

「どうしたの？」

「ん……？何でもないよ。行こうか？」

「うん」









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