罪で結ぶ絆 2

あの夏の ki ページ41

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翌朝、俺が目覚めると玲さんは部屋にい
なかった。



昨日のことは夢だったのか……？

そんな気になり、朝陽が射し込む部屋に
ゆらゆらと浮遊する、粉雪のような埃を
ただぼんやりと見ていると、ガチャリと
ドアが開いた。



「ひろ、おはようっ」

玲さんは俺を見て柔らかく微笑み「冷蔵
庫が空っぽだから」そう言いながら、し
ゃがんで靴を揃えてから俺のところにや
って来た。


「あ……」

「お米も何もないから買ってきたの」


コンビニ袋を軽く持ち上げ俺に見せると
うどんなら食べられそう？そう言って笑
う。






俺はその時、陽光に溶け込むように立っ
ている玲さんが、遠い夏の日のAに
ふわりと重なった。



“こんにちは”


白いワンピースを着て、まるで絵本の中
から抜け出したお姫様のような少女。

出会った時、一瞬にして心を奪われた。
あの懐かしい少女に。





「ひろ、どうしたの？具合悪い？」


ぼーっとしている俺を覗き込むように見
ると、心配そうな表情に変わる。膝をつ
いて俺の額に手を当てた。


「まだ熱あるね、体温計持ってくるよ」


行こうとする彼女の腕を掴んだのは、無
意識のこと。



「ひろ？」

「もうちょいいてよ」

「どうしたの？」



手を離したら、玲さんが消えてしまいそ
うで怖かった。俺の前からいきなりいな
くなってしまったあの姉妹のように。


昨日までは、俺のような人間が玲さんに
関わってはいけないと思っていたのに、
一度その温もりを知ってしまったら、途
端に身勝手になる。

良心の呵責に苦しみ、もがきながらも

救い出してもらいたい……
汚れ切った魂を浄化してもらいたい……

そんな浅ましい思いが俺を支配する。

自分は、何て最低な人間なのだろうと思
った。




「どこも行くなよ」


けれど、この気持ちをどうすることもで
きなくて、掴んだ腕を引っ張り胸の中に
抱きしめた。


「ひろ、私はどこにも行かないよ？」

「わかってる」

「ずっと、ずーっと一緒だよ……」



俺の頬に玲さんの手が優しく触れ、柔ら
かい唇がしっとりと重なり、ちゅ、ちゅ
と吸い付くように優しく唇を食む。

そのキスがあまりに心地良くて、される
がままに瞳を閉じれば

やがて、ちゅぽんと、可愛いリップ音を
たてて彼女の唇が離れた。



「待って、ひろが可愛い……」

「え？」


陽光の中、クスクスと笑う玲さん。




「ひろがあんまり可愛いすぎて困る」


そんなこと、言われた事などなかった。






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