罪で結ぶ絆 2

眠らない夜 ページ5

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「三田駅方面にお願いします」



　タクシーの中でハンドタオルをずっと
当てていたものの、傷が大きく、完全に
血が止まらない。

　裕太は、店にしていくわけにはいかな
いと渋い顔をしたけれど、途中でドラッ
グストアに寄り包帯や絆創膏を買った。



「傷が大きいし、なかなか血が止まらな
　いから、明日病院に行った方がいいと
　思うよ」

「病院なんて大袈裟だって」

「でも、傷をくっつけなくちゃ」



裕太は「わかったよ」と溜息をついた。









　裕太の住むマンションは、三田駅から
割とすぐの場所にあった。

　タイル張りの低層マンションで、エン
トランスには植栽がされており、なかな
か瀟洒な外観だ。

良いところだなぁというのが第一印象。

　三田駅周辺には小さいスーパーが点在
しており、治安も良いらしい。




「港区なんて、良い所に住んでるね」

「まあ……仕事が仕事だから」

「そっか……」







「玲さん、今日はありがとう」



「病院行くのよ」

「うん……あのさ……」


「うん？」


「少し寄って行かない？寒いし、お茶飲
　んで行けば？」

「え？」


部屋に？正直、どうするべきか迷う。




ひとりになりたくないのか？
私に話を聞いてほしいんじゃないか？

もしかしたら……
ヒヨリの事を聞けるかもしれない。


瞬時に、様々な思いが交錯した。









　でも、男の独り暮らしの部屋にのこの
こと上がっていいものか？

やっぱり今日はやめておこう。



「でも、もう遅いし」

「一人にできないって言ってたよ……」






「あのぉ？降りますかね？」


　運転席から、少しだけイラついた声が
聞こえた。どうしようっ……



「あっ、あのっ、じゃあ降ります」



　お金を払い、裕太と一緒にタクシーを
降りた。

　私があげたハンドタオルは、既に血で
斑模様になっていた。

　裕太は申し訳なさそうに「ごめん」と
言い「何となく一人になるのが怖かった
から」と続けた。

　彼の大きい身体がなぜかとても小さく
見えて、思わずその身体を抱きしめてし
まった。

　


「玲さん、あったかいね」

「うん」



　顔を上げて彼を見れば、切なげに微笑
む裕太が私を見つめている。

　胸の奥がきゅっと軋む音がして、なぜ
だかわからないけど苦しくなった。




「寒いから入って」


　裕太の部屋は二階の角部屋。鍵を開け
て一緒に中へ入る。

　そこは、ベッドと小さいテーブルだけ
の、殺風景な部屋だった。







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