罪で結ぶ絆 2

温もり ki ページ38

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「お客様に……こんなことさせるわけに
はいかないって……」

「ひろ、もう黙って」



華奢な身体で、一生懸命俺をベッドに運
ぼうとしている玲さん。彼女に体重を預
けるわけにはいかなかったけれど、身体
に力が入らなかった。



「ごめんっ……」


俺を支えきれない彼女と一緒に、ドッと
ベッドに倒れ込んだ。

温かい手が俺の額にそっと触れる。なぜ
かとても安心して、俺はゆっくり目を閉
じた。





「可哀想に……」


俺の髪を柔らかく撫でる温もりが優しく
て、切なさに胸が苦しくなる。

頼むからそんな風に俺に接しないでくれ
と願いながらも、心の中ではその手の温
もりを手放したくないと思っているのも
本当で……

心の深い場所で愛情を求めている自分が
いる。誰かに愛されることなど、俺には
許されないことなのに。



どのくらいそうしていたんだろう？
玲さんの問いかけに目を開けた。


「風邪かな……？喉痛い？」

「痛くないよ……」



「身体……見せて？いい？」


そう言いながら、プツンプツンとシャツ
のボタンを外された。


「ねえ……、化膿してるここ」

「ああ……」

「病院に行った方がいいかも……」

「明日行くわ」


玲さんは少し何かを考えているようだっ
たけれど、どこかに電話をかけ始めた。



「ここの診療所、夜間診療してるみたい
今から行こう」


え……？今から？


「タクシー呼ぶね」





* * *





病院に来たのは何年ぶりだろう？


そこは、世田谷区の救急診療所だった。

幸いこの日は内科医と皮膚科医が当直で
俺の他にもぐすっている赤ちゃんや、額
に冷却シートを貼っている子供が、廊下
の硬いベンチに母親にぴたりとくっつい
て座っている。





医者は、俺の身体の傷を見て眉を顰め、
この傷はどうしたのか訊いてきた。


これだから病院は嫌いだ。

どうしたも何も説明するのも面倒で「こ
ういう性癖の恋人にやられた」とだけ答
えると、少し驚いた顔をしたが、感染症
に注意するように言われただけだった。





当たり前のことだが、俺のスカリフィケ
ーションを目にすると、大体の人間は好
奇の目で俺を見る。

それはもう慣れっこだったが、あまり気
持ちのいいものではなかった。




「これで熱が下がらなかったら入院だよ」

「わかりました……」




このままだと全身に菌が回り、重篤な状
態になりかねなかったらしく、暫くは抗
生物質を飲みながら安静にするようにと
言われた。







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