罪で結ぶ絆 2

嘘 ki ページ34

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あの日、開店前に俺がグラスを磨いてい
ると、入口のドアが細く開いてヒヨリが
ひょっこり顔を覗かせた。

俺を見るなり、顔が歪む。



“なんか、ミツと裕太に会いたくなっち
ゃって。来ちゃった”


ヒヨリの泣きそうな表情から、何かあった
のではないかと思った。


“店に入れよ”

“ううん、”

“俺で良ければ話聞くよ？”



優しい言葉をかけられ、堪えていた涙が
溢れ出たんだろう。ぐすりと鼻を啜り、
それでも首を横に振る。

他の店員の手前、店では話しにくいのか
もしれないと思った俺は、ヒヨリを外に
連れ出すことにした。



“外で話す？”


店の裏口。煙草に火をつけると、ヒヨリ
が“私も頂戴”と手を差し出してきた。



“何？煙草吸いたいの？”


コクリと頷くヒヨリ。


“ヒヨリ、おまえ本当はいくつ？”

“えっ”

“二十歳じゃないだろ？”

“何でそんなこと訊くの？二十歳だよ”



単刀直入に訊くと、怯えたような上目遣
いで俺を見た。




“何年生まれ？干支は？……言えよ”


追い詰めるつもりはなかったが、俺が問
いかけると、ヒヨリの表情が変わる。


“ヒヨリ、おまえ……本当は未成年なん
じゃない？”

“どうしてっ……”

“んなの、俺にはわかんの”

“………っ！”




“ヒヨリ、怒ってるわけじゃないよ”



ヒヨリが今日、俺や玉に会いに来たのは
きっと不安なことがあったからだと思う。


話を聞いてもらいたいのか、只、顔を見
たかっただけなのかはわからなかったけ
れど、精神状態が不安定なのは彼女を見
ていてわかったから。だから俺は、でき
るだけ優しく話しかけた。



“ 十六……”




やっぱりな……。


“ねえっ、お願い！ミツに年齢言ったこと
黒川さんに言わないでっ！”

“オーナーは知ってるんだろ？”


縋るような眸で俺を見ると、ヒヨリは小
さく頷いた。


“おまえ……今、キャバクラで働いてな
いんじゃない？”



観念したように俺から視線を逸らし、地
面を凝視する。



“お金持ちの人と会ってお金貰ってる”



早口で、小さい声だった。



“おまえ、それって……”

“そうだよっ、ウリしてるの！”

“何やってんだよ！”

“ミツにはっ、関係ないじゃん！ ”



キッと、俺を睨みつけたヒヨリの顔がみ
るみるうちに歪み、涙がポロポロと零れ
落ちた。



嘘だろ……



“………どうして……だよ……”



まさかヒヨリがウリをしているなんて。

返す言葉が見つからなかった。








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