罪で結ぶ絆 2

傷 ki ページ29

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「ミツのお義父さん気づいていたんだ」

「いつからかわからないけどね。後から
わかったのは、ヒヨリのお父さんとうち
の母親は、高校時代の先輩と後輩で、そ
の頃付き合っていたらしい」

「えっ、そうだったの！？」


玉は驚いた声を出した。


「ああ」


遠い昔のことだけれど、偶然にも再会し
てしまい、また惹かれあったのだろうか

今となっては、もう誰にもわからない。





春の訪れとともに、義父は母親を束縛す
るようになっていった。俺と距離を取る
ようにもなったのもこの頃からだ。

頻繁に家に電話がかかってくるようにな
り、留守だとどこに行ったのか、しつこ
く訊いてきた。

比較的大人しく、口数が少なかった義父
だったけれど、ちょっとした事でもすぐ
に怒鳴るようになってしまった。







そして、俺が二年生になった春、最悪な
事件が起きた。

母親の留守中に起きた妹の事故死だ。



百合は義父と母の間に生まれた妹だった。

つまり、義父にとっては唯一の血の繋が
った娘だったから、彼女を溺愛していた。


ふっくらした頬の可愛い百合。あやすと
声を上げてきゃっきゃと笑い、人見知り
で俺から離れようとしなかったっけ。

妹が生まれて嬉しかった。
俺だって百合が大好きだった。

大切だったのに……何でっ

百合を喪い一晩中泣いた夜、俺の涙は枯
れ果てたんだ。






百合が死んで、家族からは一切の笑顔が
消えた。母親は自分を責め、毎日泣いて
ばかりいた。

その日を境に、俺の義父は人が変わった
ようになり、俺に向けてくれていた笑顔
は嫌悪の表情に変わってしまった。

陰鬱な空気に息が詰まりそうな日々を送
りながら

百合が死んだのはお前のせいだ、お前は
本当はあの男の子供なんだろう、お前が
死んだら良かったんだと――

毎日毎日言われ続け、どうして俺だけ生
きているんだと思うようになった。

彼の怒りと哀しみの矛先は、いつの間に
か俺に向かっていたから。





あの日のことは、一生忘れられない。




“どこに行っていた”

“Aの家……”

“またか”




俺がAの家族と仲良くしていること
が許せなかった義父に、髪を鷲掴みされ
た。



杭のようなものだったのか？よく覚えて
はいないが、押さえつけられ、背中に焼
け付くような痛みが走り、あまりの痛さ
に俺は気を失った。




“一生、十字架を背負って生きていけ”




薄れゆく意識の中で聞こえたその声を

俺は今も鮮明に覚えている。








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