罪で結ぶ絆 2

母の顔 ki ページ28

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さっきの光景が、頭から離れなかった。
何であんなことをしていたのか？苦しそ
うな声をあげ、裸で何をしていたんだろ
う？

只、考えただけで嫌な気持ちになった。

ぼんやりと考え事をしながら歩いていた
せいか、Aとすれ違ったことに気づ
かないでいた。


“みっくん”


名前を呼ばれ振り向けば、Aが立ち
止まって俺を見ている。



“怖い顔してるよ？怒ってるの？”

くすりと笑うA。


“怒ってないよ”

“ふふ、百合ちゃん寝てる。可愛いい”


Aは、ベビーカーを覗き込んだ。


“家に帰るの？”

“うん。友達の誕生会だったんだけど、
その子が具合悪くなっちゃって早く終わ
っちゃったの”


じゃあね、と言って行こうとするA
を思わず呼び止めていた。



“あっ、待って”

“なあに？”

“今から遊ぼうよ、面白いゲームあるよ”


突然の誘いに、Aは眸をぱちくりさ
せた。

今帰ったら俺の母親がいる。二人が何を
していたのかよくわからなかったけれど
あれはきっと良くないことなんだ……そ
う思ったから。

ネジ山の潰れたネジみたいに、上手く回
転しない頭をどうにか回し、俺は彼女を
家に帰すまいと必死だった。

彼女の傷つく顔を見たくなかったんだ。
澄んだ瞳を濡らしたくなかった。傷つい
てほしくなかった。


“いいけど……”


Aは、少し考えているようだったけ
れど、ついにそう言った。








俺の家でゲームをして遊んでいると、暫
くして母親が帰ってきた。Aを見る
と、一瞬驚いた顔をしてからぎこちなく
笑う。


“Aちゃん、いらっしゃい”


気まずそうに微笑みながら彼女に声をか
ける母親を、この時始めて汚いと思った。





“遅いじゃん、何してたんだよ”


すぐ戻ると言ったのに遅くなったことも
Aの父親としていたことも、俺は癪
に障っていた。



“つい話し込んじゃって”




嘘つき……

心の中で悪態をついた。




不思議なことに、俺はAの父親に対
しての嫌悪感は、不思議と湧いてこなか
った。

ただ、目の前で素知らぬ顔をしてAに
話しかけている母親が嫌で嫌でたまらなか
ったんだ。





思えば、この時期くらいから義父は気づ
いていたのかもしれない。

仲が良かった二人だったが、夜に目を覚
ますと、言い合いをしている事が増えて
いった。






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