罪で結ぶ絆 2

輝く季節 ki ページ26

・







“あなたの名前は？”

“宏光”

“あだ名は？”

“ミツ”


彼女は少し考えている様子だったけれど
『みっくんて呼んでもいい？妹も呼びや
すいと思うから』そう言って微笑んだ。


“みっくん”


彼女の唇から発せられたその甘い響きに
身体がカァっと熱くなった。



“何を捕まえてるの？”

“えっ？バッタだよ”


ドギマギしながらも平静を装い、虫かご
からバッタを出して見せると、ヒヨリは
後ろに下がり、Aは目を見開くと触
ってみたいと言った。








どこか懐かしさを感じさせる、涼やかな
甘い香りのオシロイバナが、庭で鮮やか
な色彩を放ちながら

夏の賑わいを映し出すかのように、元気
に弾けるように咲いていた。




“お化粧みたいでしょ？”


種を潰し、中の粉を頬に塗ると、A
はお日様のように笑った。




降り注ぐ陽光が、くっきりと木陰を作る
庭で、俺達は日が暮れるまで遊んだ。

オレンジとパープルに染まる空には、ピ
ンクグレーの雲が浮かんでいた。

一枚の絵画のような風景。最初に遊んだ
あの日の記憶は、美しい夏の輝きととも
に今でもよく覚えている。





Aは、俺に一歳になる妹がいること
を知ると見たいと言った。

俺の妹を抱き、優しくあやす彼女が眩し
くて、俺はそんな彼女の横顔ばかり盗み
見ていたんだ。




長いようで短い夏休みが終わり、俺はそ
の姉妹と徐々に仲良くなっていった。








山々は深緑から黄金色に変わり、冬へと
傾斜していく季節。



“ご近所に届け物してくるね。すぐ戻る
からちょっとだけお願いね”



あの日、そう言い残して出かけた母。




その日が何曜日だったかは覚えていない
が、学校がなかったんだから週末だった
のかもしれない。

義父も家におらず、俺と妹と二人で留守
番をしていた。



暫くすると妹の百合が泣き出した。あや
しても、泣き止むどころか益々おんおん
と声を上げる。

遅せぇよ……

何してんだよっ。時計を見ればもうすぐ
一時間が経とうとしていた。

どこか痛いのかもしれない……

火がついたように泣く妹を見ていたら、
段々不安になってきた。困り果てた俺は
泣きわめく妹をベビーカーに乗せて家を
出た。

多分Aの家だと思った。彼女の母親
と仲良くしていたからだ。




少し歩くと、平屋の古い一軒家が見えて
きた。インターフォンを鳴らしても何の
反応もない。




誰も居ないのだろうか？

俺は、庭の方にまわってみることにした。






・

あの日の記憶 ki→←夏の出会い ki

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す