罪で結ぶ絆 2

偽りの恋 ページ16

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「ひろ……私をただの客として見てる
　なら、私なんて良いカモじゃない？
　……好きにさせて、お金だけ取れば
　いいだけなのにっ……どうしてそん
　なこと言うの？」

「それは……」



　ひろの瞳が落ち着きなく彷徨う。冷静
さを保とうとしているけれど、ひろは結
構わかりやすい反応を示す時がある。




「偽りの恋なんかじゃない……」

「え？」



「だって私の気持ちは本当だから……
　どうしようなく惹かれるの。理由なん
　てない。好きな理由がなくちゃだめ？」


「玲さん……」

「私、ひろが今の仕事しててもいい。私
　のことを好きでいてくれれば絶対に耐
　えられる……」

「耐えられないって」

「どうして決めつけるの？やってみなく
　ちゃわからないのに」



ひろが戸惑っているのがわかる。



「ごめん、困らせるつもりはないの」

「いや、いいって」




「ひろが好きよ……」


　手を伸ばしてその頬に触れると、ビ
クッとして目を見開いた。



「ごめんなさい……気持ちを押し付け
られても困るよね……今のままでいい
から、これからも指名していい？」

「ああ、もちろん……」




それからひろに、これからどうする？
なんて話題を逸らされ、その話はそこで
終わった。








「裕太は元気？」



住宅街の中を駅へと歩きながら、突然出
た裕太の話題に、ひろは目をぱちくりさ
せた。


「玉？元気だけど、玲さんが呑みに来て
くれないってよく言ってたよ。たまには
顔出してやってよ」

「うん……」



嘘をついているようでも、何かを隠して
いる感じでもない様子に、あれから裕太
に何か悪いことが起きてはいないことだ
けはわかる。


「そうだね、またお店にも顔出すね」

「店でも待ってますよ」



目尻に小さい皺を寄せるひろ。
無理して笑っているようにも見えた。





「ひろの家って、この辺なんでしょ？」

「あー、そうだよ。実はあそこ」

「え？どれ？」




「あそこの豪邸」


　ひろが指さした先には、瀟洒なマンシ
ョンに挟まれた古いアパートが一軒。昔
ながらのモルタル塗りの木造アパートだ
った。

　正直意外だった。もっと綺麗なマンシ
ョンを想像していたから。



「え？あそこ？」

「そう、家賃安いし。俺は家にこだわり
　とかないから。あっ、こんな汚い所に
住んでんのかよって思っただろ！？」

「ごめんっ、思った！」

「ひっでぇー！でも割と気に入ってんの
よ。落ちつんだよね、何となく」








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