罪で結ぶ絆 2

緑の中で ページ13

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「ふふっ、花びら……食べるの？」

「え？」

「おにぎりに付いてるよ」


　花弁を摘めば、ひろに手を取られて指
ごと口の中に。


「えっ！」

「桜って旨いんだな」


　ぺろんと舌舐めずりをして、悪戯っ子
のような顔になる。


「あ、食べたっ」

「んふふ、ごちそーさま」





＊





　お弁当を食べ終えると、どこに行こう
かという話になった。

　広大な敷地の公園内には、遊歩道や吊
り橋、美術館などもあるらしい。

　天気も良いし、腹ごなしにとりあえず
散歩しようということに。私達は、吊り
橋の方向に歩き出した。



　遊歩道には、犬を散歩させている家族
や、手を繋いで楽しそうに笑い合ってい
るカップルの姿。

　麗らかな週末の公園には、たくさんの
幸せが溢れていた。






「ひろ、結構揺れるね！滝があるよ」

「あー、人工の小川だよ」

「生き物はいないのかな？」

「どーだろね」



　吊り橋の辺りは、小川を挟むように左
右から樹が生い茂り、下を見ると小さい
滝がある。

　ここが東京だということを、忘れてし
まいそうなほど溢れる緑が目の前にあっ
た。

　新緑の香りが懐かしい安曇野の自然を
思い出させ、私は思い切り深呼吸をした。



「気持ちい……」

「東京じゃないみたいだな」



　吊り橋を渡りきると木陰の下にベンチ
があり、私達は並んでそこに腰を下ろし
た。




「ねえ、ひろ」

「うん？」



「私ずっと考えていたの。どうしたらひ
　ろの恋人になれるだろうって。ひろは
　……私がお客じゃなくなったら彼女
　にしてくれる？」

「……それ本気で言ってる？」



「本気だよ……」



　驚いたような反応と戸惑い。ひろは溜
息をつくと、私の顔をじっと見つめた。








「玲さんは考えたことある？」

「何を？」



「俺の職業だよ」



　ひろは私から視線を逸らさず、暫く
じっと見つめていたけれど、大きい呼吸
と共にふっと笑った。

　男娼の彼女になりたいなんて、この女
は頭がイカレているんじゃないかと思っ
ているんだろうか？




「そんなのわかってる……」

「そう？玲さんはさ、自分の恋人が他の
　女と寝るなんて耐えられないでしょ？」



「私は……」

「うん」



「それは嫌だけど……仕事ならきっと耐
　えられると思う」

「女ってさ、最初は誰もそう言うんだよ
　ね」



「言われたことあるの？」

「あるよ」








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