検索窓
今日:7 hit、昨日:12 hit、合計:280,676 hit

偶然 ページ1











 気付けばもうすぐ春分の日。暦ではも
う春だというのに、今日は月も凍えそう
なほどに寒い夜だった。

 





「玲ちゃん、今日アフターどう?」



 私の職場である、六本木の高級クラブ
『NOBLE』には、私のお客様である
戸部先生がいらしていた。

 戸部先生は、首都圏で美容外科を何店
舗も経営されている方で、ボーイズクラ
ブの診断書のことでお世話になった。

 私は偽名を使っていたから、本名で診
断書を取るわけにはいかない。

 予てから私の太客だった先生にお願い
すると、理由も訊かずに快く引き受けて
くださった。




「嬉しいっ、私も久しぶりに先生とゆっ
 くりお話がしたいです」



私の膝を撫でる手にそっと掌を重ねる。

 ママからも客とは寝るなと言われてい
たが、背に腹は変えられなかった。

 その時はそれなりの代償を払ったが、
それからも、先生はこうして時々私を誘
ってくださる。

 もちろん食事やお酒だけで、身体を求
めてくることはあれ以来一度もなかった。









 店を出ると、清澄な冷たい空気と少し
だけ湿った匂いが心地良い。


――あれ?

 ちらちらと、空から白いものが落ちて
きて、それが雪だということに驚く。




「雪だね」

「ほんとに……」

「すぐに止むだろう。今日はホテルで一
 杯吞もうか?」

「はい」



 これからお酒でも呑みに行こうという
ことになり、差し出された腕に腕を絡め
る。

 先生がよく利用される、六本木のミッ
ドタウンにある高級ホテル、リッ○カー
ルトンに入ろうとした時だった。







「玲さん……」






 突然声をかけられ、驚いて振り向くと
裕太がぽつんと立っていた。




「裕太っ」

「何してるの?」


「……裕太こそ何してるの?」

「え……俺はこれからお客様と待ち合わ
 せ。今日は仕事だよ……」



 そう言い、戸部先生を一瞥した後、彼
に腕を絡めている私のことをじっと見つ
めた。

 いつものふわんと柔らかい印象とは違
い、冷たい雰囲気が漂っている。

 裕太の言う仕事とは、ボーイズクラブ
のお客と会うという事だと思った。しか
も同じホテルらしい。



 まさかこんなところで鉢合わせするな
んて……






「そう……」

「うん」



 髪もアップし、私の格好はホステスそ
のもの。まさか裕太に見られるなんて夢
にも思っていなかった。


 裕太はプロだ。彼が見れば、間違いな
く今日の私は水商売の女に見えるに違い
ない。








胸の痛み→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (563 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1514人がお気に入り
設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

siori(プロフ) - chata925さん» chata925さぁん、いつもコメントありがとうございます!久しぶりに甘いピンク書いて、私ももっと書きたくなってしまったんですが、とりあえず今回はこの辺で(^_^;)消えないで蜃気楼〜!分かりますっ!chata925さん上手い!w。移行後もお付き合い頂けたら嬉しいですっ! (2018年12月5日 17時) (レス) id: 0ca5cf15d8 (このIDを非表示/違反報告)
chata925(プロフ) - sioriさぁーん。甘々のピンクの時間ご馳走様でしたっ!みっくんのぷっくりなお口で囁かれてみたいですぅ。いつまでも続いていてほしいっ、けど甘かった分辛いお話が待っているんですね(ToT)あぁ消えないでぇ蜃気楼ぉーーーっ みたいな気持ちです。 (2018年12月4日 22時) (レス) id: aafe42069b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ユキさん» ユキさぁん...♪お久しぶですねん!お仕事お忙しい中、読んでくださってありがとうございますぅ!何の癒しにもならずごめんなさいっ(>_<。)今後ユキさん辛いかも……うぅ……涙。その前にpinkを書きたかったんです。気になる結末ですが……はい!精一杯頑張りますね! (2018年11月23日 12時) (レス) id: c7ae208032 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - sioriさんお久しぶりですっ!お仕事バタバタしててコメント書けてなかったんですけど、仕事の合間に読ませていただいてます!束の間の幸せなのでしょうか…きっと切なくなるんだろーなー(´;Д;`)2人が幸せな結末を迎えられますように(>人<;)続き楽しみにしてまーす! (2018年11月23日 7時) (レス) id: d0a562aa7b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - マシャさん» マシャさん、初めまして!(o^-^)わーん、面白いと言って頂けて安心しました。夢なのに本当にきゅんも何も無くここまできてしまいましたので(^_^;)そうなんです演技です(涙)でもまだわかっていない事が(火事など)色々ありますのでどうなるかです。更新頑張りますね! (2018年11月21日 7時) (レス) id: c7ae208032 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:siori | 作成日時:2018年10月12日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。