湯煙大騒動⓶ ページ11
.
「開かない…？えっ、な なんで？」
引き戸に手をかけて正常に動かそうとすると、何かに引っかかったように、鈍い音が動かす度に鳴って扉が開かない。
不味い。これは非常に不味い状況だ。
生まれたままの姿の男女が浴場に2人。
…あれ？何だかこの状況どっかであったような…。
「どうした。扉の前でぼうっとして」
「っ？！ちょっ、てっ、鐵腸さん…？！後ろ向いてって、言いましたけど…！？」
「すまない。心配になったから」
いつの間にか鐵腸さんは湯から出て、突っ立ったままの私の様子を心配して見に来たようだった。
その声に振り返ってしまうと、もちろんのこと全裸のままである鐵腸さんは私を見下ろしていた。
何とかタオルで大事な部分を隠しているとは言え、私だって全裸なことには変わりない。
鐵腸さんの方はなんとか湯煙が濃いお陰で、全てが見えているという訳ではないが、それがむしろいやらしいというか…という余計なことを考えてしまう私が嫌になる。
「あ…の、扉…開かなくて」
「扉が？」
「わっ？！」
扉の前で立つ私を気にせず、鐵腸さんは腕を伸ばして引き戸の取手を持とうとすると、より私との間が詰まる。
私の吐息が鐵腸さんの厚い胸板に触れてしまいそうで思わず息を呑んでしまった。
「…本当だな、常人の力では開かない。ならば…」
「わー！ダメ！壊すのはダメです！器物損壊ですよ！！」
「そうか、それもそうだな。ならば誰かが来るのを待つしかない」
「うっ…そうですね…」
そうして、私たちは互いに裸のままで再びお風呂へ逆戻りになった。
タオルで隠していたい気持ちは山々だが、湯の中にタオルを浸すことはマナー的に良くない。
だから渋々裸のまま鐵腸さんと同じ湯に浸かっている。
そして鐵腸さんはというと…
「あの、離れて欲しいです…」
「何故だ。せっかくお前と2人きりなのに」
「そういう問題じゃないです！」
「？」
こてん、と首を傾げる鐵腸さんは、私の肩がぴたりと触れる距離にいた。
地味に広い浴槽の筈なのに、どうしてこんなに近いものか。
そして突如怪訝そうな顔で私に問いかける。
「…昨日、条野と2人きりで散歩していたらしいな」
「そうですね…」
「何かされなかったか？」
そう言いながら鐵腸さんは顔を近づける。
思わず一歩下がったが、再び距離を縮められるので意味がない。
「今されそうな距離になってるんですけど…」
「今じゃない。昨日の話だ」
「ひえ…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ラザニア太郎(プロフ) - ましろさん» 文スト4期おめでとうございます〜！声優さんも楽しみですし、猟犬以外にもあのキャラこのキャラのあんなシーンが見られるとずっとドキドキします…^ ^ 鐡腸さんも条野さんも��子さんも隊長も全部全部楽しみです！ほんとに待ち遠しい…^ ^ (2022年5月20日 16時) (
レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - わかってくれますか笑！あと文スト4期おめでとう！ついに鐵腸さんが猟犬が来るねー笑 (2022年5月20日 1時) (レス) id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
ラザニア太郎(プロフ) - ましろさん» 初めまして、コメントありがとうございます！確かにそうかもしれません笑 私としても天然なイメージが強いですね…^ ^でも正義という言葉に忠実であり、芯があって強いところが本当に魅力的だと思います！！ (2022年5月20日 0時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - なんか鐵腸さんって冨岡さんに似てる笑 天然なとことかめっちゃ強い所とか！ (2022年5月20日 0時) (レス) id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
ラザニア太郎(プロフ) - ニゲラの蕾 兼 新芽さん» お久しぶりです^ ^喜んでいただけたようで何よりです！新しい大学生活で死ぬほど忙しくてネタすら思い浮かばず、そもそも小説のこともド忘れしていました…汗ですがGW中に少し暇ができたので書いてみました！相変わらず亀更新ですがご愛読していただければ幸いです^ ^ (2022年5月5日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ラザニア太郎 | 作成日時：2021年11月14日 18時
