__ ページ37
・
正平は女の体を眺める。
ややサイズの小さいTシャツとジーンズが
その体にピッタリと張り付き、細く
引き締まったウエストを強調している。
「あの……、本当にすみませんでした。
大丈夫ですか」
女は首をすくめると、上目遣いに
正平の表情をうかがってきた。
むせかえるほどの色気を醸し出す外見に
似合わないような少女のような仕草に
頭の奥が熱くなる。
「あ、ああ。……えっと、大丈夫、大丈夫。
気にすんなよ」
できれば気の利いた誘い文句の一つでも
かけたいのだが、言葉が見つからなかった。
「いえ、そういうわけには……、
もしよかったら一杯
奢らせてもらえませんか？」
女はおずおずと言う。
その願ってもない申し出に、
正平は背筋を伸ばすと、
「も、もちろん！」と声を裏返した。
女は安堵したのか柔らかい笑みを浮かべると
正平の隣の席に腰掛け、ダイキリとビールを
注文した。
バーテンダーはさっき正平に見せた無愛想が
嘘のように、鼻の下を伸ばしながら愛想よく
頷いて、カクテルを作り始める。
「え、えっとさ。名前……。そうだ。
名前はなんて言うんだよ？」
「まさよ。まさっていうの。よろしくね。
あなたは？」
まさと名乗った女は、にっこりと
屈託なく笑う。
そのあどけない表情からはまだ20代のよう
にも見えるが、時折ふと見せる妖艶な仕草
は、もっと経験を積んだ大人の女のように
も見えた。
「正平。正平だ」
正平が自己紹介すると、まさは
「正平くんか、良い名前ね」と甘い声で
つぶやいた。
バーテンダーが正平の前にビールを、
まさの前にダイキリのショートグラスを
置いた。
まさは「ありがとう」とバーテンダーに
礼を言うと、細く長い指でグラスをつまむ。
「それじゃあ、乾杯。
二人の偶然の出会いに」
まさは目を細めながら言う。
慌てて正平が掲げたビールグラスに、
軽く自分のグラスをぶつけたまさは、
その真っ赤な唇にグラスをつけると
唇と同じくらい赤い舌をちろりと出し、
舐めるようにカクテルを一口飲んだ。
その官能的な仕草に目を奪われる。
まさと過ごす時間は夢の中を
漂っているかのようだった。
緊張が解けてくるにつれ、正平はまさに
様々なことを語った。
自分の車のこと、高校時代の武勇伝、
現在危険な仕事に就いていること。
かなり脚色の加えられたそれらの話を、
まさは目を輝かせ、身を乗り出して
聞いてくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 756人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます！ここから更に急展開ですのでお見逃し無く！！ (2021年5月25日 22時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます！ (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開！！ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています！ (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月15日 12時
