第１章−１− ページ4
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ここ……？
重そうな鉄製の扉を眺めながら、
櫻井翔は首をひねる。
今日は知り合いに紹介された個人病院の
就職面接のはずだった。
だからこそ着慣れないスーツに袖を通し、
ネクタイを新調までしたのだ。
地下鉄青山一丁目駅から徒歩で10分ほど、
高級住宅街の外れにその建物はあった。
赤煉瓦造りの５階建てのビル。
『梓ビル』と表札の掲げられたその外壁には
縦横無尽にツタが這い回っていて、
紅く染まった夕日の中、
寂びつつも上品な雰囲気を醸し出していた。
１階は『喫茶 梓』と小さな看板の出ている
レトロな雰囲気の喫茶店になっていて、
歩道に面した窓から中を覗き込むと、
銀髪と見まがうような白髪の初老が
コーヒーを入れていた。
住宅街の奥まった場所にあるせいか
客は少なく、カウンター席に
黒髪をポニーテールにした女性が
一人座っているだけだった。
喫茶店の入り口の脇には上り階段があった。
最初、櫻井はその階段を上ろうとした。
しかしよく確認すると、
指定場所は地下１階となっていた。
首をひねりつつ櫻井が
建物脇の路地を覗き込むと、
そこに地下へとおりる錆の目立つ外階段があった。
この下が面接場所？
戸惑いながら階段を下りると、
建物の側面に埋め込まれるように、
重厚感あふれる鉄製の引き戸があり、
その脇に『Bar 大野 会員制』と記された
大理石の表札があったのだった。
こんな所を面接場所に
指定するところをみると、
やはり普通の職場ではなさそうだ。
緊張を覚えた櫻井は、ほとんど無意識に
ジャケットから万年筆を取り出し、
指先で器用に回しはじめた。
大学卒業時に恩師から贈られた
『S.S』とイニシャルが彫ってある万年筆。
これを回していると
なぜか気持ちが落ち着いてくる。
常にこの万年筆はポケットに入れて
持ち歩いていた。
緊張が希釈された櫻井が
万年筆をポケットにしまった瞬間、
唐突に扉が開く。
扉の奥から、糊のきいたブレザーを着た
小柄な少年が顔を覗かせた。
身長は150センチ程度だろうか。
櫻井より頭１つは小さい。
少年はネコを彷彿させる大きな目で
櫻井を睨め上げると、口を開いた。
「君が面接を受けに来たって男かい？」
「え、あ、あの……」
櫻井がこたえに詰まっていると、少年は
「さっさと入ってよ」と
無造作に櫻井の手を掴み、
引きずるように中に引っ張り込む。
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未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます！ここから更に急展開ですのでお見逃し無く！！ (2021年5月25日 22時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます！ (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開！！ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています！ (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月15日 12時
