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「患者は68歳男性。
幽門部にステージ2の進行胃癌。
既往歴は特になし。術式は
胃全摘およびリンパ節郭清を予定している」
大野の説明を聞きながら
患者の顔を覗き込んだ櫻井は、
眉間にしわを寄せた。
目の前に横たわる初老の痩せた男の顔に、
見覚えがある気がした。
眉間のしわを深くしながら記憶を
探った櫻井は、それが誰かに気づき
「あっ?!」と声をあげる。
「どうかした？」
背後に近づいてきた雅紀が、
からかうような口調で訊ねてくる。
「だ、大臣……。榊原大臣が……」
櫻井は震える声を絞り出しながら、
目の前の男を指さす。
ベッドに横たわる男、
それはたびたびニュースで見る顔だった。
外務大臣の榊原一郎。
「うん、そう。榊原一郎外務大臣だよ」
雅紀は櫻井の頬を人差し指でなぞる。
「な、なんでこの国の大臣がこんな所に?!」
「こんな所だからだよ。
うちのクリニックは、主に
こういう患者の治療を行っているんだ」
大野は楽しげに言う。
「こういう患者？」
「治療を受けたことを、
絶対に知られたくない患者さ」
大野は口角を上げた。
「榊原大臣は2年ほど、この国にとって
極めて重要な条約を締結するために、
外国との厳しい交渉に臨んできた。
現政権にとってその条約の締結は、
絶対に成功させる必要がある。
そして2ヶ月後の首脳会談の際に
条約締結を行う予定だ。
そのことは知っているかな？」
大野の質問に櫻井は頷く。
そのことはニュースで
何度も取り上げられていた。
「条約締結は、榊原大臣が先方の国の
国務長官と何度も何度も話し合いを重ねて、
信頼関係を重ねた結果可能になった。
だからこそ、もしいま大臣の健康不安説が
流れでもしたら大きな問題になる」
櫻井は戸惑いつつ相槌を打つ。
話のスケールが大きすぎて
現実味がなかった。
「そこで、俺達が秘密裏に
手術を行うんだよ。絶対に外部に
知られないようにな」
「ここで……、大臣を手術……？」
櫻井は呆然とつぶやく。
「ああ、そうだよ。
大学病院などの大病院では、どれだけ
隠そうとしても情報が漏れてしまう
可能性がある。だから、絶対に治療を
したことを知られたくない人物は、
俺達に依頼してくるんだ。幸い今は国会も
閉会中で、1ヶ月後の外遊まで大臣は
大きな予定はない。その間に癌を治して
しまおうっていうわけだよ」
「こんな小さなクリニックで政治家が
治療を受けるっていうんですか?!」
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未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます！ここから更に急展開ですのでお見逃し無く！！ (2021年5月25日 22時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます！ (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開！！ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています！ (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月15日 12時
