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「俺って愛されてんのな」
その日の放課後一緒に帰っていた私にそう言った。隣から彼を見上げると嬉しそうだった。でもほんの少し憂いの表情。私は数ある記憶の中で未だにその姿が忘れられないのだ
「送別会しようって皆言ってくれたんだけどさ、」
道の小石が私の足に蹴られる度に可愛らしく飛んでいく。ジョングクの前に止まった小石が、今度は彼によって再び動き始めた。石を追う私たちの瞳が合うことは無い
「...なんとも言えない気持ちになるよ」
どういう気持ちだったのだろうか。今も尚、その答えは導き出せない。この時どんな言葉をかけるのが成功なのかと必死に考えて、私は何も言わなかった
「俺がいなくなったらAはどう思う?」
ついに小石は転がった末、道路脇の草に隠れてしまった。もうあれを探すのは困難だろう。姿かたちが似ている石を沢山ある石の中から探すことはできない。根気強く探せばいつかは見つかるのだろうか。
ジョングクがその質問をして来たことに私は、彼が言う、なんとも言えない気持ちになった。もちろん悲しいし寂しいし、虚しい。
「.....」
私はなにも言わずそっと彼の手を握ったのだった
▽
私の元まで、ジョングクへ、という大きいアルバムが回ってくるのに時間はかからなかった。それを持ってきたのは隣のクラスの女の子。メッセージ書き終わったら他の人にも回してと言う彼女の言葉に頷いたもののペンは進まなかった。
他の人が書いているメッセージを読んでいくと、どれも彼への愛で溢れていた。ずっと友達だよ、寂しいな、これからも頑張ってね、たまには会いに来い...そして、
『ずっと大好きでした...』
他の人に見られることに躊躇いは無かったのだろうか。ほかの文字に比べて小さく書かれていたもののそれは確かに告白だったのだ。そこで私は静かにアルバムを閉じた
そのまま何も書かずにクラスの子にバトンタッチし、教室を出て裏門の桜の木の下に向かった。そこに彼はいなかったがその場に座り空を仰ぐ
好きだからこそ、みんなは張り切ってしまうのか。苦しいなあ...。誰にも言えなかった言葉が制服に染みを作った
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Labia(プロフ) - 1ちゃんさん» ありがとうございます。 更新致しましたので、是非見ていってください^ ^ (2020年8月18日 19時) (レス) id: d89ca10c87 (このIDを非表示/違反報告)
1ちゃん - あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"(泣)更新楽しみにしてます…(泣) (2020年8月13日 7時) (レス) id: 43879a9f7a (このIDを非表示/違反報告)
Labia(プロフ) - 1チャンさん» ありがとうございます!もっと1チャンさんをそのような気持ちにできるよう書いていきますね...!更新お待たせしないよう、頑張っていきます^ ^ これからも、『おやすみわたしの愛しき太陽』をよろしくお願いします! (2020年7月13日 19時) (レス) id: d89ca10c87 (このIDを非表示/違反報告)
1チャン - Labiaさん» 読んでいてとても心が綺麗な気持ちになります(泣)更新楽しみにしてます! (2020年7月12日 14時) (レス) id: 43879a9f7a (このIDを非表示/違反報告)
Labia(プロフ) - なむさんさん» 文章が綺麗...嬉しすぎるお言葉ですね(;_;)私がお話を作るにあたって意識している部分です。素敵な作品と言っていただいて恐縮です!私の想像で出来上がった物語ですか更に素敵な作品だったと思っていただけるように頑張ります!素晴らしいコメントありがとうございます (2020年6月14日 2時) (レス) id: d89ca10c87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:iris | 作成日時:2020年5月13日 6時