【ゴールデンカムイ】兵器な彼女【尾形百之助】 (ページ29)

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29話。ページ29

Aside

『...一通り片付きましたね』

｢ああ...。大丈夫？怪我は？｣

『何もありません。杉元さんは...ああ、腕に傷が...ちょっと待ってください、今消毒します。』

｢でもっアシㇼパさんを先に...！｣

『杉元さん、手負いの状態で彼女を探しに行って返り討ちにあったら元も子もないです。焦るかもしれないけど、先に手当をしなくては。本当は私も、今すぐ尾形上等兵のところに行きたいんです。わかってくれますよね？』

そう彼を諭すと、不安そうな顔をしながらも頷いてくれた。

死体が転がる家で、杉元さんを座らせて消毒をする。
消毒液を含めた綿で軽く触ると、彼は痛そうに眼を瞑った。

なんだかこうやって見ると、彼って結構整った顔してるんだな...。眉だってキリッとしてて男らしいし、切れ長の目なのに大きい。輪郭だってすっきりとしてて、もうそれは完璧な美男子だ。

｢...そ、そんなにじっと見つめられると照れるよ...｣

『いや、顔、綺麗だなと思って』

｢っっっときめいちゃう...｣

たまに無垢な乙女のようになる杉元さん。彼のこういう所は、結構好きだったりする。

『あなた、美男子なんですから怪我には気をつけてください。もったいないですよ』

｢こんだけ傷がたくさんあれば、もう関係ないさ｣

『その傷も込みで素敵だと言っているんです。一体何人の女性があなたに恋をしたんでしょうね...はい、終わりました。...さ、アシㇼパさんを探しに行ってください。気をつけて』

｢ああ！あとでまた合流しよう｣

そういうと、杉元さんはアシㇼパさんを探しに家を出ていった。

『はぁ.........』

転がった死体たちを数える。15、16、17...。こんなに殺したのか。
いくら囚人とはいえ、人を殺すのは気持ちの良いものではない。

手と顔には、誰のものかもわからない血がついていた。

尾形上等兵に習った銃の扱い。彼の足元にも及ばないけれど、私は自分を守るために精一杯訓練をした。

けど気づいたのだ。自分を守るということは、他人を傷つけることと同じだ。私は、自分を守るためなら平気で人を傷つけられる。そういう人間だ。

『...なんだか気が滅入るなあ』

近くに転がっていた死体の上に跨る。頬を触ると、徐々に体温が失われていくのが分かった。
手を取ってみる。もちろんその手は私を握り返すことなく、しっかり持っていなければ力なく落ちてしまいそうだった。