昨日の約束

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「ひどくないですか？初日に好きな人いるって牽制されるし、勝手にタクシーに押し込まれるしで。素敵なのに、たまに酷いんです」
「･････････」
「何か北山さんなら、知ってると思ったのに、残念」


吹っ切れてるのに、寂しそうな横顔。
コロコロ変わる表情がとても愛らしい。こんな素敵な女性なら、むしろ世にいる男性はほっておかないだろう。初日の時に声のトーン変わったとかちょっとあざといとか思ってごめん。
こんなにいい子なのに。嫉妬してごめん。



「あのさ、俺･･･もしかしたら、だけど。その人知ってるかも」
「え！？本当ですか！？」
「うん。誰かは言えないけど。でも安心して？」
「･･････？」
「君のが数百倍可愛いから！その人よりも！」


そう言って、あおいさんの肩を叩く。
行きたい場所がある。
だから、行く。
ベンチから立ち上がり、今度は俺があおいさんの背中を押す。


「だから、君には他にいい人いるから。だから･･･ごめん！藤ヶ谷のことは諦めて！」
「･･･/////////っ！」


俺自身も吹っ切れたように心から笑顔がこぼれてしまった。


藤ヶ谷･･･
藤ヶ谷･･･


その言葉が、本当なら･･･


それって…


それって…！


彼女に頭を下げると、走り出した。
どこにいるか、分からない人を探しに。


スマホをポケットから取り出し、履歴から電話をかける。
走りながら。


「もしもし、母ちゃん？」
「藤ヶ谷から、連絡あったよね？」
「大学聞かれたんだよね？え、住所も？」
「･･･分かった！ありがとう」


『太輔くん、結局言ったんだ？私にはあんなに黙っておいてって言っていたのに』
『聞かれたよ。大学も。アパートの住所もね』


"でもさ、お金があるのに。あの部屋に住む"理由"ってなんだろうーね？"


母ちゃんの言葉、二階堂の言葉･･･


"好きなら、ちゃんと自分から言いな。ミツが自分の手で幸せを掴むんだ"


タマの言葉･･･


幸せを怖がっちゃいけない。
切り拓くのは自分自身。


昨日(5年前)の約束を守りにいく。


それは、自ら。待つだけじゃダメだから。

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