昨日の約束

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「そんな気遣わなくてもいーのに。本当に思い浮かばない･･･財布？あれお前どんな財布持ってったけ？キーケース？あれキーケース持ってるけ？腕時計？腕時計する人だっけ？アクセサリー？つけるっけ？」


続けて思い浮かぶ最低限なものを口に出してく。本当に俺は藤ヶ谷のことを何も知らなかった。どんなモノを使い、どんなモノが寿命で、どんなモノを大切にしているか。何も知らない。頭を抱える。変なものをあげられない。


「そうやって考えてくれてる時間が本当は一番のプレゼントだって気づいてる？」
「へ？」
「北山が現在のオレをちゃんと知ろうとしてくれる、それが一番のプレゼント。中学の頃のオレだけじゃなくて、今のオレを知って欲しい」
「･･･今の藤ヶ谷」
「オレらには時間があるからさ」


時間がある。それは、本当？


「・・・本当に？」
「え？」
「･･･もう急にどこか行ったりしない.....？」


不安で不安で仕方ない。だって、幸せだから。
幸せは、怖い。簡単に崩壊してしまう。


「しない。行かない。ずっと、北山のそばにいる」


急に立ち止まる。藤ヶ谷を見ると真剣な瞳をしていた。その視線に思わず抱きつきたくなる。
･･･今日はどうしたの？何かいつもと違う。
藤ヶ谷には"あおい"さんがいるでしょ？


友だちとして、そばにいるってことだよな？
そんな勘違いさせそうなこと言うなよ。
期待しそうになるだろ。


「そんなマジにならないでよ。逆に困るわ。あ、あれなんてどう？」


ショーウィンドウに飾られてる藤ヶ谷に似合いそうなシャツを見かけてそのショーウィンドウまで小走りする。今絶対顔赤い。バレないように、見られないように。誤魔化す。

え、待って。
ショーウィンドウに飾られてるそのシャツは17,000円と表示されていた。高っ！貧乏学生には手が出ない。でも、そこは…プライドで。


「･･･北山とお揃いの腕時計がいい。」
「え？腕時計？」
「うん」
「ごめん。俺･･･お金あんまなくて、バイトはしてるんだけど…学費とか家賃とか、本当にごめん。」


俺とお揃い･･？何で、そんなの・・
二階堂のエセかもしれない情報を知っている以上、安価な腕時計をきっと藤ヶ谷はつけない可能性がある。ましてやハタチの節目にあげる腕時計なんて。知識ない俺でも分かる。高価なものが必要だと。


「誰が高いの欲しいって言った？」
「え？」
「安くていい。お揃いだったら千円でも二千円でも」
「･･･」
「お前とお揃いなら何でもいい」

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