昨日の約束

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「･･･何でこの席なんだよ」
「もー、玉森！拗ねんな！くじ引きなんだから」
「二階堂！お前イカサマしただろ！」
「何でオレがそんなのする必要あるんだよ。誰得？」
「･･･いや、まぁ。」


5年ぶりの5人での再会。
二階堂にお願いしていた通りなんとかうまいことやってくれた。
玉森、二階堂、千賀が俺の前に順番に座ってる。
そして、藤ヶ谷と俺。
俺の前は千賀で。玉森が一番遠い。


本当に上手にイカサマしてくれたので、玉森は怒ってはいるけど気付いてはいないようだった。


千賀は美容師になるのが夢で、今はカラーリングの練習を同級生としているらしく金髪になっていた。少し今の専門に行ってオネエ度数が上がってる気がする。良くいえば女子力？そんなツルツルお肌の千賀にわかりやすく二階堂はメロメロだった。
千賀はあいにく気付いていないだろうけど。


二階堂と千賀がグイグイ藤ヶ谷に話を振るから藤ヶ谷は上手にあしらいながらも、イギリスでの話を話してくれた。もちろん、俺も知らない話で。
話を聞いてるだけで、行った気になる。
この話の時は玉森も興味津々だったようで、楽しそうに聞いていた。そんな玉森を見て安心するし、俺自身も笑みがこぼれる。本当に･･･あの頃に戻ったみたいだった。誰一人、恋バナなんてしなくて。
中学校の時のヤンチャな話に花を咲かせ、一日戻れたら何をする！？だの･･･くだらない話で盛り上がった。


いいな。こういうの。
隣におまえがいる。隣に藤ヶ谷がいる。


藤ヶ谷が笑ってる。
ずっとずっと見たかった笑顔。
歯が白いなー。肌色は相変わらず黒いな。
鼻高いな。横顔綺麗だなー。


そんな浅はかなことばかり考えながら、頼んだ烏龍茶で喉を潤す。


藤ヶ谷がテーブルの下で、俺の左手をぎゅっと握ってくれるから。繋がれた左手。心臓が左手にあるみたい。ドキドキする。楽しい。


･･･なんか、眠たい。気持ちいい。


ここは居酒屋。集まってから3時間ほど経ったころ。
身体がふわふわして、眠気･･･睡魔に襲われていた。


あれ？いつもはこんな時間まだバイトしてるのに。


なんでだろう･･･


「･･･んーー･･･」
「北山？」


視界がフラフラして、そのままおでこをテーブルにぶつけそうになる。


それを支えたのは優しい手だった。
支えてくれたのは優しい手だった。


覚えてるのは、ここまで。



「宏光ーーーー！？」


千賀の慌ただしい声を最後に記憶がない。

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