「脳が足りてねーんだよヒーロー」 ページ9
「……ぷっ、はははっ！！くふっ…ヒヒッ……！」
「……」
「あ〜おもしろ……何を言い出すかと思えば、
脳が足りてねーんだよヒーロー」
目の色を変えて俺を見た。口調と様子の変化に言葉を探していると、"あべこべ君"はそれが冗談であると言うように再び笑った。
「取引の条件ってのは、相手へのメリットとデメリットが同等のものであるべきなのは君も分かってるだろう？
でもねぇ……君はまだ僕をただのガキだと思ってるのかなぁ、あべこべ君をよく知りもしないで僕が納得するだろうと確信している。
現代ヒーローの驕りってやつ？共感性羞恥で死にたくなるよ」
……こいつ、わざと煽るような言葉を選んで使ってるな。やはり当初の予測通り、ただの子供じゃない。
「確かに子供相手の条件提示だった、それは認める。だが、お前も大人を舐め過ぎだ。俺が手札を一枚しか用意してないと思ったか」
「お！それは楽しみだな〜、なになに？」
無邪気なガキを装っているが、目は正直だ。虎視眈々と俺の隙を狙っている。
「お前がさっきの条件を飲まなかったのは、この先ヒーローに何を言われようが捕まろうが痛くも痒くもないから、もしくは逃げ果せる自信があるから。それともう一つ。
施設が嫌だから」
「嫌っていうか……ん〜…嫌、か…………まぁ、いっか。そういう事にしとくよ。
正解、概ね当たってる。やっぱ賢い人間は話が上手くて助かる」
"あべこべ君"は部屋を見回して、ゆっくり俺に視線を向けた。子供らしくない妖しげな笑みを作っては、指を伸ばして「それ返してくれるかな」と言った。指差す俺の手元には、こいつから剥ぎ取った面。
これ自体に何かあるとは思えず、特に何も言わずに差し出した。それを机に置いて、手で触れながら"あべこべ君"は続けた。
「で、君の次の手札は？」
「お前を保護する」
「……保護？」
「未成年の非行少年としてな。拘置所や少年院には行かなくて済む」
「物は言いようだぜヒーロー。保護じゃなく、監視だろう？僕にメリットはあるのかなぁ？」
「少なくともまともな衣食住は保証してやる。お前だって、窃盗紛いの事を繰り返して生活するのには限界があるって分かってるだろ。もっと合理的に考えれば、どっちが良いかは明瞭なはずだ」
「僕の事はユキって呼んでくれよ」→←「あーメンドクサイなー」
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
