「ここに来る資格なんかねぇだろ」 ページ49
「いきなり胸ぐら掴むのはヒーローとしてどうなんだい？
＿＿＿＿＿＿＿マイク」
「……なんで来た」
「同居人の様子を見に来る事がそんなにおかしいかな」
「お前は
相手が子供だとか、自分がヒーローだとか、そんな事は考えていなかった。今は、ヒーローとして一回りも下の人間に対して言動を選んでいる余裕はなかった。
「ヴィランに加担したお前にっ……ここに来る資格なんかねぇだろ」
だからやめとけって言ったんだ俺は。散々、ろくな事ねぇぞって……最悪が起こらないように。もう二度と、あんな思いはしたくないから。親友を二度も失うなんて御免だから。
「……だったらさ」
黒い前髪がこいつの目を隠す。俺の手を掴んで引き剥がした。
「だったら尚更僕にその態度をやめなよ。僕はヴィランなんだろ？彼を自分の大事な友達アピールなんかして、ヴィランが何するかも予想つかない？利用されると思わないのかい？
君がすべきなのは、何も言わずに僕を拘束する事だったんじゃない？」
「…！」
得体の知れない寒気が俺を襲う。怒りすら湧かなかった。自分の半分しか生きてないはずなのに、その声の奥に、深い沼のような不気味さを感じた。
分からねぇ……何も読めねぇ。こんな人間は初めてだ。
「……っ」
それでも
「……賭けた結果がこれかよ」
「…なに？」
「こいつに賭けた結果がこのザマかって、聞いてんだよ」
「言ってる意味が分からない」
手を差し伸べた事を咎めるつもりはねぇ。冷たく見られがちなあいつが、根は情に厚い人間だってのは俺も分かってる。こいつもそれに気づくはずだって、どこか望んでたのは事実だと認めてやる。
上っ面しか知らねぇが、こいつが相澤消太に賭けたのはただのお遊びなんかじゃなかったはずだ。
何かしらの可能性を見出したから
「彼が死んで世界が滅ぶとでも？」
「っ、お前」
「毎日人が死んでるってのに、彼だけを特別扱いしろって？君の大事な人は、他の人には取るに足らない社会の塵かもしれない。
事実彼は生きてる。回復もするんだろう？僕は彼に何一つとして危害は加えてないのに、何故僕に当たるんだい？」
目を見ようにも見えない。いや…見たくなかった。何を考えてるか分からない目を見るのには恐怖を感じそうだった。
「……何かしたら今度こそヴィランだからな」
結局、逃げるように、負け惜しみのような言葉を置いて病室を後にした。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
