「君らの目的は？」 ページ40
一瞬で悟った。音だけが聞こえるテレビの向こうに居る奴が、格が違う猛者だという事を。
「……先生。俺がやるんだ、あんたは」
《分かってるよ。その子と話がしたいだけさ》
……あぁそうか、全部こいつが仕組んだ事か。"先生"……ね。
「話したいなら顔を見せるってのが礼儀じゃないかい？」
《客人に醜いものを見せる訳にはいかない》
「僕だってお面を被ってるだろう？素顔を見せろって言ってる訳じゃないよ。君がどういう奴なのかが知りたいだけさ」
《僕が誰かは、もう知ってるんじゃないかい？》
「……愚問だったね」
AFO……はるか昔から帝王として闇に君臨し続けているヴィランの親玉。全盛期は既に過ぎ去ったものとされてるが、未だに誰も彼の前では為す術が無いとも言われている。名前は聞いた事があったけど僕は興味が湧かなかった。……それが、こんな所でお目にかかるとはね。
「君らの目的は？」
《平和の象徴、オールマイトを殺す》
「その後は？」
《彼に聞くといい》
「じゃあ別の事を聞こう。本当に僕に仲間になって欲しい？」
《……どういう事かな》
「僕が取ってる立場は知ってるはずだ。常にどちら側を取ってきた訳じゃない、君らにとって僕は不安材料にしかならないんじゃないかな？」
少し揺さぶりをかけてみる事にした。まぁそんな事向こうの彼には分かられているんだろうが、ボロを出すのは別に彼じゃなくたっていいんだ。というか単純な興味でもある訳だし。
《エリザベート・バートリーを知ってるかい？》
「血の伯爵夫人の事？」
《若さと美貌を渇望するあまり、身の回りの処女の肉を切り裂き、その血に浸ったと言われている女性さ。僕は、ああいう徹底した利己主義者に共感するんだ。自分が望む事のためならどんな手段も厭わない……
君もそうだろう？》
揺さぶりをかけたつもりが、どうも揺さぶられているのは僕の方らしい。話し方が上手いなぁ、なんて他人事のように思う。物腰柔らかな口調の裏に、絶対的な支配が見え隠れする。わざと見せているのか、それすら分からないんだから大物は面倒だ。
《今の環境は君には不似合いだ。僕らの所へ来るといい、きっと君の望む世界が手に入る》
「それはそれは、とても魅力的な誘い文句だね」
《君自身も自分の気持ちに気が付いているはず。ヒーローもヴィランも好きじゃない……のは間違いで、本当は、
"ヒーローは嫌い"なんだろう？》
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
