「だから言っただろ〜？」 ページ29
「やあ！ハハッ！さっきぶりだねぇオメデタくん〜その手は核に触れようとしてたのかなぁ？残念だけど核はここには無いよ見て分かると思うけど」
捲し立てると、驚きやら困惑やらが混ざりに混ざった表情でオメデタくんは手を引っ込めた。彼だけじゃない、この場に居る僕以外の全員が立ち尽くした。
それもそうだ、何せ瞬間移動でもしたかのように核があった場所に僕が現れたんだからね。あんなに巨大な核は姿を消してしまったし。
「このままタイムアップでも狙おうか？」
「っ……ならもう一回凍らすまでだ」
低くそう呟いて右手から冷気を放つオメデタくん。
「残念だけど君はマトモに個性を使えないだろうねぇ何故かって君は今右手から熱を放出してる訳だし？僕の身動きを封じる事も今から核を見つけ出す事も出来ないからだ」
「何言ってんだお前……」
「でも実際君の容姿は元とは反対だよ？右手が熱くてビックリしてるでしょ？だから言っただろ〜？」
僕に向けられる、奇異でも見るような目。強者である人間がこんな表情をする、やっぱり人間って面白い。これはクセになりそうだなぁ〜、強者の鼻っ柱を折るのが楽しい。道端の小石に転ばされたような顔がたまらない。
「尻尾くんと透明ちゃんは……動けないか。それじゃ終わるまでそのままで。
あぁタコくん、言っとくけど核はこの階には無いよ。別の階だ。かと言って君が正しく階段を使えるとは思わないけどね。信じられないなら試してみるといいさ、この階からは抜け出せないはずだよ。
さてオメデタくん、君はどうしようか……僕はヴィラン役で君はヒーロー役、僕が君に危害を加えようと、多少は演技の範疇になると思わない？」
「……！」
「それに、役なんか考えなくても今の僕は君にムカついてるんだよね」
氷で滑らないように歩きながらオメデタくんの周りを歩く。どうやら誰も動く気は無いらしい。オメデタくんは視線だけを僕に向けて睨みつけた。
「初対面の君に教えてあげるよ。人を簡単に不快にさせる方法とやらをね。
…………やっぱやーめた。こんな狭い所で君の血を降らすのはつまんない。
僕はエンターテイナーなんでね、つまらない事はやらない」
「……うるせぇ」
次の瞬間、首から下が氷に包まれた。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
