No.149 ページ49
姉さんは一瞬驚いてから、すぐに破顔した。
そのまま俺の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。
「そんなわけないでしょ。
っていうか、渡辺くんから誤解してるとは聞いてたけど、
まさかそんなふうに考えてるとは思ってもみなかった。
……確かに何事にも鋭い蓮を羨ましいとは思ってたけど、
まるっきり無関係だから」
ほっとした途端に、
渡辺が後ろから背中を叩いてきた。
「……だってさ、目黒。
良かったじゃん。
前からメル友だったからお前のせいじゃないことは
知ってたんだけど、
……やっぱりこういうのは本人から聞かないと
納得できないと思ってさ」
「……じゃあ、
なんで姉さんはあいつと別れたりなんか……」
あっちがどうであれ、
姉さんは本気であの男を愛しているようだったのに。
そう尋ねると姉さんは力なく笑った。
「……蓮は、
あの人が私のこと好きじゃないって言ってたけど
根本を正せば、元々問題があったのは私の方だったの。
……蓮には言ってなかったんだけど、
あの人と出会う一年前、
私、他の男の人と付き合ってたの。
でも、その人物凄い浮気性で。
私と付き合ってても何人にも手を出してたりしてたから辛くて仕方なかった。
もう限界って思って別れたんだけど
あの人が初めて浮気をしてしまったとき、
……たぶん、思い出しちゃったんだと思う、
彼に追い縋ったの。
……たぶんあの人にはそれが重くて嫌だったんだと思う。
――束縛なんて、される方じゃないと分からないけど、
信用されてないんだって思ったのかもしれない。
あの人を家族に紹介したときもあの人はあんまり、
嬉しくなかったと思う。
でもプロポーズされて、
私が一方的に押し切る形で同棲までしたけど、
……もう無理かなあってだいぶ自分でも気が付いてたんだよね。
……だから、あの人のこと恨まないであげて」
……あの男を、
そこまで恨んでいたわけじゃない。
何よりももっと恨むべくは自分自身だったのだから。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
