それでも好きになった。③ (ページ5)

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No.105 ページ5

「……本当に幸せそうだったよ。

不安なことなんて、

何もないみたいに笑ってたから

……間違いなく幸せなんだって、そう思ってた。

――思い込もうとした」

目黒くんはそこで拳を握った。

「……でも、

俺は心のどこかで、

ずっと、……ずっと、

本当は嘘だって……

分かってたんだ」

目黒くんの握りしめた手に、力がこもる。

私はそれを見てどうすることもできずに唇を噛み締めた。

何かしたいと思うけれど力になれない。

私は何も知らないし、

表面上励ましても

目黒くんには何の励ましにもならないだろうことをわかっていた。

「……姉さんがその男と同棲して少ししてから、

――俺は目を逸らしていた現実を直視することになる。

……よくある話なんだけどね。

その日、俺は姉さんたちのアパートの近くまで来てたんだ。

遠出して買い物を頼まれてたんだけど、

そこで――

あの男を見た。

女連れの、ね」

「……それで、目黒くんは、どうしたの？」

「……殺してやろうと思ったよ」

私はその声の低さに驚く。