分隊長の手の内は (ページ9)

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微笑みが導くものページ9

壁の外まで続く晴天の下、私は2体の巨人を前に心を踊らせていた。

｢お疲れ様〜。ハンジ、リヴァイ。進捗どう？｣

巨人実験場に入って来たのは、分隊長のAだった。
彼女は私の同僚に当たる。
私たちの実験の様子を見に来たらしい。
Aは私の巨人を用いた実験に協力的で、よく実験場に顔を出す。

｢よくわからんがコイツは随分楽しいらしい｣
｢最高だよ…！この子達は性格もそれぞれ特徴があって、それがわかっただけで相当な収穫だ！そこに関しては他の動物や私たちと変わらないらしい…こんなのって凄くないかい！？｣
｢ハンジ、今日は特に絶好調じゃない？｣
｢あぁ、馬鹿みてぇにうるせぇ｣

リヴァイはいつも通り酷くて、Aは楽しげだ。

｢リヴァイがここに居るなんて珍しいね。何かあった？｣
｢このメガネ野郎がはしゃいで手がつけられねぇってコイツの部下が泣きついて来やがった｣
｢モブリットかな…可哀想に…｣
｢それで様子見に来てやったら雑用を押し付けられた｣

リヴァイはいつも以上に眉をひそめながらAに手元のバインダーを見せる。

｢雑用なんかじゃないよ！実験結果の記録は大事な仕事だ！｣
｢そんな大事な仕事ならテメェがやればいいだろ｣
｢私が書くと私情が挟まっちゃうかもしれないじゃないか！｣

私がそう言うと、リヴァイは凄い目つきで私を一瞥してから俯いて深くため息をついた。
リヴァイはいつも巨人の実験に対して理解できないというような顔をしていたが、頼んだことは充分やり遂げてくれる。

｢へー、この記録用紙よく出来てるね。チェックリストみたいに項目化してあるんだ。ハンジが作ったの？考えたね｣
｢ふふふ、でしょ？いいでしょ？｣
｢ハンジ、今日やっぱ気持ち悪い｣
｢Aまでリヴァイみたいな事言わないでよ！実験に関しては唯一味方だと思ってたのに！｣

私がそう言うと、Aはいつも通りの微笑を浮かべた。
やはり、完全な本心というより少しの本音にリヴァイの真似を混ぜて遊んでいただけらしい。
その愉快そうな顔に何だか気が緩んだ。
彼女はいつもこうだ。
彼女に着いていこうと思う部下が多いのも頷ける。
みんな、この微笑みに絆されてきたのだと思う。
この微笑みに導かれて、みんながみんな死地へと向かう。
そう思うとすごく悪魔的だな、なんて、失礼なことを考えていた。