壁外調査前準備 ページ7
｢この陣形だとガキ共が勝手な行動をした時に不安がある。Aの分隊を俺たちの辺りまで下げられないか？｣
リヴァイが、机の上に広げた地図を指先で叩きながら言う。
私たち調査兵団幹部は、次の壁外調査に向けて直前の打ち合わせをしていた。
エルヴィンとリヴァイ、ハンジ、ミケ、そして私。
窓の外は真っ赤になっていて、夕日はほとんど壁に隠れている。
｢なるほど。しかし、そうなると先頭集団が不安だな。前回の索敵だとAの分隊が先頭にあったことで、随分死傷者が減った。分隊ごと移すのではなく、Aの部下を先頭集団の指示役にして、Aと部下何名かを下げるのはどうだろう。A、指示役を任せられそうな部下は居るか？｣
リヴァイやハンジからの提案を受けて、エルヴィンが決定に導く。
大体いつもこういう風に決まっていく。
今回も例外ではなく、エルヴィンは最善の形態で壁外調査に挑むために、私に意見を求めた。
｢そうだね……みんな、自分の班を持っていてもおかしくないくらい優秀だよ。特に先頭集団を任されて物怖じしないのはアリスだと思う｣
｢なるほど。確かにアリスは優秀だし冷静だ。しかし、若干集団意識が薄くは無いか？｣
｢そうでもないよ。ただ、ナルほど慎重じゃないだけだ。ナルの場合は先頭集団を率いるには向かない。あの子は優しすぎる｣
｢優しすぎる、か…｣
私とエルヴィンの会話を聞いたミケが呟いた。
夕日に照らされて真っ赤になったミケは、眩しいのか、いつもより目が細い。
カーテンを引いてやろうかとも思ったが、夕日はもう壁に完全に身を隠すところだった。
｢うん、アリスは判断も早いよね！下手な賭けには出ないし、そこの不安は無いな｣
地図を眺めていたハンジが、顔を上げて普段通りの快活さを見せる。
｢そうだね。まぁ、ある程度ギャンブラーな方が先頭には向いてるけど｣
｢わかった。アリスを一時的に先頭集団の班長にする。A、君と一緒に後ろの陣営に移る部下を指名してくれ。それ以外の君の隊員を『アリス班』としよう｣
班長未経験者の集団が先頭なんて、中々踏み切った選択かもしれない。
｢で、どいつをこっちに寄越すんだ｣
リヴァイの前髪の隙間から、彼と目が合った。
陽が落ちて、部屋の中は薄暗い。
ミケがランプを灯す。
｢ランスとトルソン、リラも欲しい｣
｢君の右腕は連れていかないの？意外だね｣
ハンジが不思議そうな顔をこちらに向ける。
ランプの光がチラついた。
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作者名：ぽんぽた | 作成日時：2024年2月1日 14時
