悪態を信頼して ページ5
縦1m、横10cm。
訓練兵時代から何十回も何百回も、何千回も叩き込まれた。
ミスなんて有り得ない。
ワイヤの先を肩へ突き刺し、刃を突き立てる。
いつまで経っても、この巨大な肉を斬る感覚は嫌いだ。
討伐した巨人の上に降り立って、後方を確認する。
班員たちは順調に進んできている。
リヴァイはいつも通りの様子で5体目を狩っていた。
寄ってきた巨人の腕を躱して、うなじを削ぐ。
一度木の上に戻り、全体を見渡すと、もう大概の巨人はリヴァイが倒しきっていた。
あとは割とすぐ片付くだろう。
｢また来るぞ。ボケッとするな、アホ面｣
｢毎回一言多いんだよなぁ｣
リヴァイの悪態を聞き、彼の方に目を向ける。
右後方に8m級。
｢リヴァイ！右脚！｣
｢チッ！｣
リヴァイは回転すると、自身の足をつかもうとした巨人の指をそのまま切り落とした。
私が背中側にまわり、うなじを削ぐ。
｢あはは！リヴァイの討伐補佐で私が討伐するなんて、何年ぶりだろうね！｣
｢お前もうなじを削られてぇのか？｣
｢そんなこと言ってる場合じゃないよ〜。もうみんなあそこまで来てる。勇気あるね｣
｢お前が出させたんだろ、アイツらの勇気を｣
｢え？リヴァイそんなこと言うっけ？後でもっかい聞かせて｣
｢後で斬る｣
｢宣言しないで？｣
私がリヴァイに背を向けた巨人の目を斬ると、リヴァイは不服そうな顔をしながらもすかさずうなじを削いだ。
このままいけば団員たちがここを通過する頃には、全て倒しきっているだろう。
｢順調だねぇ！今日は久しぶりにみんなで外食とかしようか！｣
｢余裕こいてんじゃねぇ。後ろ見やがれ｣
｢え？｣
｢…奇行種だ｣
振り向けば、全速力で走ってくる巨人が視界に入った。
遠くの丘からだが、あまりにスピードが速い。
｢あー、なんでこんな時に……南西に15m級の奇行種を確認！ナル！ランス！速度を上げて門まで駆け抜けろ！後ろの新兵たちの命は先頭にかかってる！｣
距離としては指示は届いたはずだが、奇行種の到着までに全員が通過できるとも限らない。
私達が仕留めるしかない。
討伐自体はリヴァイに任せるのが早いだろう。
｢あいつは私が煙弾で引きつける。リヴァイは木の上からうなじを狙って｣
｢…しくじるなよ｣
｢わかってる｣
木の上に飛んでいくリヴァイの後ろ姿を確認し、奇行種の向かってくる直線上に立つ。
煙弾を両手に持つ。
速い。巨人はどんどん迫ってくる。
命中する距離まで引きつけ、巨人の目に向かって両手で煙弾を放った。
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作者名：ぽんぽた | 作成日時：2024年2月1日 14時
