静かな訳ねぇ ページ33
⚠汚い話です⚠
――――――――――――
｢帰って来ないねぇ｣
向かいの席に座ったハンジが呟く。
食堂はがらんとして、弱いランタンの光が石壁を照らしている。
｢ガキじゃあるまいし｣
｢だって久しぶりの完全非番だし……酒場かな｣
｢飲み始めると長ぇからな｣
｢酒場とかあんま治安良くないよ…｣
｢心配しすぎだろ｣
｢リヴァイだって心配なんだろ？待ち構えるように座ってさ｣
｢書かせる書類があるだけだ｣
｢急ぎの物でもないくせに｣
｢ンなことねぇ｣
｢またまたぁ｣
ハンジはそう言って笑うと、瞼を閉じて机に突っ伏した。
｢眠いなら部屋に戻れ｣
｢帰ってきたのを見届けてから…｣
｢ここで寝るな…！｣
"バタンッ"
ハンジを起こそうと立ち上がって机に手を着いた瞬間、扉が音を立てて開いた。
俯いたAが暗闇を背後に立っている。
｢遅かったな｣
｢ん｣
Aは俺の言葉に短く答えて扉を閉めると、ハンジの席の隣に腰掛けた。
｢酒場に行ったのか｣
｢ん｣
｢酔ってるだろ｣
｢いや…｣
｢嘘つけ。素面のお前がそんな静かな訳ねぇ｣
｢………｣
｢お前までここで寝るな！｣
俺の｢酔ってるだろ｣という問いかけに行動で答えるようにベンチに倒れ込んだAにそう言うと、交代するようにハンジが起き上がる。
｢帰ってきた…？｣
｢コイツ酔ってやがる。運ぶから手伝え｣
｢私も運んで…眠い…｣
｢ふざけんなテメェ｣
――――――――
｢じゃあ宜しく〜…｣
ハンジはそう言うと、Aの肩から手を離して自室へ消えていった。
ハンジの部屋の4部屋隣、廊下の一番端のAの部屋まであと少し。
Aに貸している左肩には、完全に脱力した重みがかかっている。
｢もう少し歩く努力をしろ｣
｢……｣
｢聞いてんのかテメェ。そんなに飲むなんて珍しいな｣
ふとAの顔を見ると、廊下の弱い明かりでもわかる程に頬が紅潮していた。
こちらを見て、何も聞いて無さそうな顔でへらりと笑う。
そんな風に笑われると、いつもと様子が違いすぎてこっちの調子が狂う。
すると突然、Aの腕が首に絡みついてきた。
｢何の真似だ…｣
｢リヴァイ…｣
｢近…！｣
目の前まで迫ったAの顔が、そのまま近づいて俺の顔の横に収まる。
耳のすぐ横で息を吸う気配を感じて、自然に体が強ばる。
｢は……｣
｢は…？｣
｢……吐きそう…｣
｢はァ！？それを先に言え！！｣
｢きもちわるい…｣
｢待て待てここで吐くな…！｣
｢ゔっ…｣
｢あー…！―――｣
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作者名：ぽんぽた | 作成日時：2024年2月1日 14時
