分隊長の手の内は (ページ29)

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いつからページ29

壁外調査の帰路で斜め後ろから分隊長を見て、数年前の壁外調査のことを思い出した。
Aさんの悠々とした足取りは変わらない。
しかしいつの頃からか、彼女が分隊の最後尾につくことは無くなっていた。
第5分隊は今回もまた兵長たち精鋭班と共に、行路では最前線を、帰路では最後尾を担っている。
第5分隊の最前を行くAさんはいつも通りの様子で、兵長に今回の調査の報告をしていた。

｢ナル、Aさんっていつからこうだったっけ｣
｢いつから？会った時からずっとあんな感じじゃない。壁外でも基本伸び伸びしててさ｣
｢いやそうじゃなくて。前はさ、帰る時は最後尾に居たろ？｣
｢あー……分隊長になってすぐの頃から1年くらいの間やってたかな｣
｢じゃあもう4年くらい前か…｣
｢急に何なの｣
｢何であれ辞めたんだろうって思って｣
｢あ、それは……本人から言われた方がいいか｣
｢何だよ、ナル知ってんのか｣
｢帰ったら聞きなよ｣

ナルはそう言うと、スピードを上げてAさんの少し後ろに馬をつけた。
段々壁が近づいて来る。
後方を確認するが、巨人の気配は無い。
開門の合図が響いて、見慣れた門が大きな音を立てて開いた。