一番大切な人たち ページ25
Aが取り出した小包は、リヴァイから聞いた話から考えると、恐らくリヴァイが受け取った物と全く同じだ。
縦横15cm弱の、見た目より少し軽い小包。
絶対中身、同じ…
リヴァイへだけの贈り物じゃなかったという事だ。
そうなると私たち(主にリヴァイ)が振り回されていた、込められた意味も深い意味を持たないという事になる。
｢A…？これ、私もらっていいの…？｣
｢うん。いつもの感謝だから｣
｢いつもの感謝……｣
リヴァイが俯いたまま、Aの言葉を小声で繰り返す。
｢大切な人だからね｣
｢大切な人……｣
｢い、いやぁ、ありがとう！｣
隣の男からとんでもないオーラを感じる。
完全に負のオーラであるという事だけはわかる。
｢A、因みに他には誰に…？｣
｢他？他はエルヴィンだけだよ。3人にこれを渡すつもりだったんだ。でもエルヴィンにだけ渡せてなくて。まだ戻って来てない？｣
｢そうだね…｣
｢出直すかな。作業再開しないといけないから、そろそろ戻るね｣
Aは私に本を返し、鞄の口を閉じた。
目的を果たして満足そうに扉へ向かう。
｢ちょっと待ってA！｣
｢ん？｣
｢……大切な人って、君はどういう捉え方をしてる？｣
Aと向き合っていることに耐えられなかったのか、本棚に向かって立ち尽くすリヴァイがどうしても可哀想でならなくて、どうにかならないかと、私はAを止めた。
こんなに振り回されたのに、オチにあまりに救いがなさすぎる。
しかし、Aは振り返るとキョトンとして、固まってしまった。
｢…あー、ごめん！変な事聞いたね！｣
｢いや大丈夫、考えたこと無かった。大切な人…｣
｢あはは、いいんだよA。ありがとうねわざわざ｣
｢…私はね｣
止めて悪かったと思いAを退室させようとすると、逆にAは鞄を床に置いて扉に背を向けた。
｢私は、物心つく頃には家族が居なかったからさ。家族ってものはよくわからないけど、すごく大切な人たちだよね｣
そう言いながら歩いてくるAを、背後の窓から差し込む光が照らす。
｢だから君たちの事は『家族くらい大切』かもしれないけど、家族がどれくらい大切かってわからないから、私の『大切の尺度』の最大限が君たちなんだ｣
Aは近くまで来ると、私の左手とリヴァイの右手を取って握った。
リヴァイが驚いたように顔をAに向けると、Aは私たちの顔を交互に見て微笑む。
｢だから、これからもよろしく。私の一番大切な人たち｣
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作者名：ぽんぽた | 作成日時：2024年2月1日 14時
