大切な人と ページ21
｢オルオ！｣
｢はい！？兵長！？｣
｢オルオ、お前、さっきの話もう一度聞かせろ｣
｢え！？何です！？｣
｢…消え物の意味の話だ｣
思い返すこと20分前―――
｢これあげる｣
Aが渡してきたのは小包だった。
上等な紙に包まれたそれには、濃い赤紫のリボンが掛けられている。
｢何だこれ｣
縦横15cm弱と小包としてはそこまで小さくないが、あまり重さは無い。
中心部を軽く指で挟んで押すと、若干硬い感触はあるものの分厚い布を触っているような触感だった。
｢待って押さないで！壊れやすいから！｣
｢壊れやすい？ご丁寧にリボンまで掛けやがって。またファンシーなもんが入ってんじゃねぇだろうな｣
｢あれやっぱ怒ってた？ごめんって。似合うと思って｣
｢……それが本心だったらより癪に障る｣
俺がそう言うとAは愉快そうに笑った。
コイツは本当に、感情がわかりやすいのかわかりにくいのかわからない。
本心は誰にも見せていないような、そんな空気感がコイツの周りには流れている。
しかもそれを大半の人間に気付かれないように、相手には、さも自分の全てを見せているかのように振る舞うからタチが悪い。
これが無意識か否かはわからないが、コイツのそういう食えないところをエルヴィンは気に入っているらしい。
俺は逆にそこが気に食わない。
｢急に何だお前は｣
｢そんな顔しないでよ。ただいつもの感謝をね｣
そう言って空になった皿を2人分重ねるAの表情には、とくに裏の意味は無さそうだった。
｢それ出店で買ったんだ。お爺さんが1人で売ってて、大切な人と食べるといいって言ってたから、君にあげるよ｣
｢…え？｣
｢ん？｣
｢合ってるのか？｣
｢え？｣
｢宛先は俺で合ってるかと聞いてる｣
｢何言ってんの。私がリヴァイと誰かを間違えるわけない｣
｢いやそういう事じゃ…｣
｢あ、ゆっくりし過ぎた…！ナルに怒られるから行くね｣
｢あ？…あぁ｣
何が入っているのだろう。
軽さからして布か紙か、それともまたヘアピンみたいな物が入っているのか。
物によっては突っ返すが…
視線を小包からAに戻すと、Aは鞄を掴み、重ねた皿を持って立ち上がった。
｢それはほんの気持ちだけど、これからもよろしく。夕食の時にまたね｣
慌ただしく食堂を飛び出していくAの背中を見送ってから時間を確認する。
すぐに予定は無いため、その場で小包を開いた。
｢菓子…｣
｢オルオ！｣
｢はい！？兵長！？｣
そして最初に戻る――
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作者名：ぽんぽた | 作成日時：2024年2月1日 14時
