小包 ページ20
『女性から貰うお菓子が、物によって意味が違うって話ですよ』
オルオが厩舎で言っていた言葉を、ふと頭の中で反芻した。
ペトラが言う通り、アクセサリーや時計などの身につけるような物ならまだしも、消え物に深い意味があるなんて思えない。
そういったものに振り回される男はどれほど居るのか。
どう思い返したってやはり…
｢しょうもない……｣
食事をしながら1人で小さく呟いた言葉は、騒がしい食堂の中に消えていった。
｢あ、居た居た。リヴァイ！｣
聞き慣れ過ぎた声が聞こえてくる。
もう顔を上げなくたっていいくらいだ。
｢今日は1人なんだね。隣座っていい？｣
Aはそう言うと、こちらの返事も待たずに俺の横に腰を下ろした。
｢訊ねたなら返事くらい聞け｣
｢座ったよ｣
｢事後報告かよ｣
｢今日はエルヴィンが酷くてさぁ。中央政府行ったんだけど、自分が連れてったくせに目的も何も説明してくれないんだよ。しかも馬車の中で書類の作業進めさせるしさ。あんな揺れの中で書類仕事なんてしたら確認だけで酔うって｣
｢あぁ、大変だな｣
｢そうなんだよ！｣
飯を食べながら話半分で聞いているが、本人は喋っているだけで割と満足していそうだった。
少し相槌を返すと嬉しそうにまたペラペラと喋り出す。
｢メシが冷める。喋るか食うかどっちかにしろ｣
｢……でさぁ、中央政府の人がね｣
｢食う方優先しろよ｣
スプーンを置いたのを見て窘めると、ハッとしたような顔をした後｢ちょっと待って｣と言って急いで口に運び始める。
｢わかったから詰めて死ぬなよ｣
｢そんなつまらない死に方するなって？｣
｢誰が上手いこと言えと言った｣
Aは満足そうにケタケタと笑った後、また食べ始める。
俺は空になった皿を重ねて、水の入ったポットからコップに水を注ぐ。
｢ん、んんん｣
それを見ていたAが自分のコップを差し出してくる。
｢ちゃんと喋れ｣
｢お、おぃずゅ、ちょぅだい｣
｢やっぱ喋るな。汚ねえ｣
｢ひどい｣
俺が食べ終わってから10分くらいして、Aがやっと食べ終わった。
兵団の食事はそこまで多い量でないはずだが、Aはいつもペラペラと好き勝手喋っているため食事を終えるのが遅い。
周りで食事をしていた兵士たちもいつの間にか減っていて、食堂内には俺達も入れてあと数名しか残っていなかった。
｢ごめん待ってもらって。渡す物があって｣
Aはそう言うと、椅子の上に置いていた鞄の中から小包を取り出した。
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作者名：ぽんぽた | 作成日時：2024年2月1日 14時
