消え物の意味 ページ18
調査兵団本部の館を出て、広場へ出る。
いつもは対人訓練などが行われているが、今日は人影が無い。
広場の横を抜けると、本館横に大きな厩舎が見えてくる。
3つの厩舎が連なった建物の横には馬場があり、数名の兵士が馬場で軽い乗馬訓練をしている。
空いた時間に率先して訓練をしている兵がある程度いるらしい。
いい心がけだ。
馬無しでは壁の外に出られない。
新兵が普段大人しい馬に振り落とされているのを横目に厩舎内に入る。
｢消え物にそんな深い意味ある訳ないでしょ｣
｢お前がそういうことしねぇだけじゃねぇのかよ｣
｢勘違いしてストーカーとかするなよ｣
｢俺の事何だと思ってんだ…｣
部下2人がまた言い合いをしている。
理由はいつも、聞かなくてもいいくらい些細なことだ。
｢お前ら、待たせたな｣
｢お疲れ様です兵長｣
｢終わりました！確認お願いします！｣
オルオはそう言うと通路の横に避けて、ペトラはオルオを横目に馬具の準備を始めた。
仕事が一段落した2人が時間を持て余していたため、たまには緩い乗馬訓練もいいだろうと思い誘っておいたのだった。
自分の仕事が終わるまで少しかかるから先に厩舎へ来させておいたが、どうやらオルオは掃除をしろと言われたと思っているらしく、この1時間に満たない時間で厩舎内は驚異的に綺麗になっていた。
いつもなら完璧だが、ここばかりは勝手が違う。
｢オルオ、この辺りの土、少し戻すぞ｣
｢えっ！？何でですか！？それを掃除してたのに｣
｢やり過ぎだ。急に環境が変わったように思ってストレスに感じる馬が出るかもしれない。新築の厩舎で牛や馬が死にやすいのはそういうことだろう｣
｢せっかく綺麗にしたのに…｣
肩を下げるオルオにスコップを持たせて、馬具の準備に取り掛かる。
｢だから言ったのに。兵長は掃除しろなんて言ってなかったって｣
ペトラが呆れたように言う。
やはりオルオが1人で張り切って掃除をしていたらしい。
勝手に深読みしていたようだ。
にしても、この短時間で1人でこの広い厩舎をここまで整えた努力は褒められるべきだが…
｢アンタは勘違いが多いのよ｣
｢今回がそうだっただけだろ！｣
また言い合いが始まった。
いつもなら放っておくが、空き時間は有限だ。
｢さっきから何揉めてやがる｣
｢兵長も聞いた事ありません？｣
｢だから何が｣
｢女性から貰うお菓子が、物によって意味が違うって話ですよ｣
｢…はぁ？｣
過去最大にしょうもなくて、聞いたことを後悔した。
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作者名：ぽんぽた | 作成日時：2024年2月1日 14時
