暴挙と受容 ページ11
全員がこの異常事態を固唾を飲んで見守る中、またAが暴挙の片鱗を見せる。
正直、もうこれ以上彼の怒りのボルテージに触れないで欲しかった。
しかし彼女は自分の暴挙に気が付かないのだ。
｢リヴァイ、顔上げてくれる？｣
｢あ？お前のおかげで作業が捗ってるところだが？｣
｢あ、そう？それはよかった！うれしいなぁ。リヴァイ、前より眉をひそめてる事が多くなった気がしててさぁ。目が悪くなってるんじゃないかって少し心配だったんだ。良かったら使ってよ！｣
いや違う、A、それは皮肉だよ。なぜ分からない。
あとリヴァイが眉をひそめていて不機嫌そうなのは多分君のその行動のせいだ。
｢うん、やっぱり印象が明るくなるね！似合ってるよ！何より可愛いし！｣
死んだ。彼女の死因はリヴァイだ。
見ていた全員が悲しみに目を伏せた。
｢………可愛いか？｣
｢うん、可愛いよ？｣
｢…………そうか｣
さよならA……君はとてもいい子だったよ……
いつもにこやかであたたかくて愉快で……
｢こいつはペアだったんだろ？｣
リヴァイが、いつもと同じ調子でそう言った。
恐る恐る視線を向ける。
｢え？うん、そうだよ｣
｢そうか。じゃあこうするといい｣
パチンという音と共に、リヴァイがAの前髪にヘアピンを着け返す。
もう片方は依然としてリヴァイの額に収まっている。
｢お前のその前髪も鬱陶しそうだと思ってたところだ｣
リヴァイがAの悪意の全くない暴挙を受け入れた…！？
意外すぎる光景に、私はモブリットと顔を見合わせた。
｢えー、リヴァイ用にと思ったのに｣
｢1つで充分だ｣
｢貰っちゃっていいの？｣
｢そもそもテメェが持って来ただろ｣
｢じゃあ1つ貰ってくね｣
｢あぁ｣
｢似合う？｣
｢似合う似合う｣
｢ふふふ、じゃあ頑張ってね。ハンジもモブリットもお疲れ様。また時間あったら見に来るよ｣
Aはそう言うと、軽い足取りで仕事場へ戻って行った。
普段は喧騒に包まれている実験場に、妙な静寂が流れる。
リヴァイは何事も無かったかのように、ヘアピンが着いたままの前髪を気にせず、ペンを走らせている。
｢……リ、リヴァイ…｣
｢なんだよ｣
｢あ、あの……それ……｣
｢あ？｣
｢か……かわいいね！！！｣
パァンッ
私は張り手を食らった。
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作者名：ぽんぽた | 作成日時：2024年2月1日 14時
