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それの冷たい感覚を感じれば、手首を目掛けて一発。
大丈夫、ただの罠だから死ぬつもりなんてない。
「った…、」
思いの外深く入ったのか、痛覚が私の脳に訴えかけてくる。
持っていたナイフが床に落ちた鋭い音が響く。
立っていられなくなり倒れ込むと、同時に慌てた様子のベクが部屋に入ってきた。
BH「お前っ…!何してんだよ!」
「ベク…、」
定まらない焦点はベクの綺麗な顔を見せてくれない。
BH「クソッ、とりあえず止血しねえと…、」
私の手首を抑えて何かを探す素振りを見せたベクの腕を掴む。
…それを本気でやってるなら私は期待外れを超えて軽蔑するよ。
「…ベク。」
じっとベクを見つめる。
私が欲しいのはそんなのじゃない。
ベクだって自分の欲望を抑えられてない。
…ほら、早く選んで。
BH「…最後、だから。」
ゆっくりと深呼吸したベクは、もう自身を支配している汚い欲を抑えられないというように腕を強く掴んだ。
生唾を飲み込んで、瞳はギラギラしてて、もう理性なんて少しもない様子に私の胸は高鳴って仕方がない。
手首にベクの熱い吐息がかかる。
来る、もう少しであの強烈な快楽が私を飲み込んでくれる。
「っ…、ぁ…、」
涙が出るくらい気持ち良かった。
脳の奥がじわじわと痺れて、必死に訴えかけていた痛覚は一瞬で快楽に変わった。
ああ、このまま死んでもいい。
二度と味わえない感覚を求めて苦しみながら死ぬくらいなら、今大好きな彼に身体中吸い尽くされて死んだ方がよっぽど幸せ。
生理的に流れた涙はベクを煽るのには充分すぎたみたいで、彼は私の手首をますます強く噛んで離してくれない。
BH「ヤベぇ、止まんねぇっ…、」
子供みたいに必死にしがみつく彼に、私もまた自分の欲深さを自覚した。
「…このまま吸い尽くして、殺して。」
このままベクと離れ離れになっても、ベクも死ぬし私だって生きていける自信がない。
どうせ死ぬなら、大好きなベクに殺されたい。
私達は共依存してたんだ。
どっちが欠けても許されないし、このままを維持するのは無理なんだ。
「…終わらせよう、こんな生活。」
BH「っばか!そんなのダメに決まってるだろ!」
「じゃあどうして止めないの、」
ベクが私の手首を離した。
だけど、名残惜しそうなその視線は誤魔化しきれてない。
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ぼぷぴ(プロフ) - 貴方様が書くお話、本当に面白いです…!!今回のギョンスのお話も最高でした…いろんな意味でドキドキが止まりませんでした!!これからも応援しています! (2020年3月24日 16時) (レス) id: eb25947e96 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう。(プロフ) - 1話1話がすごく読み応えがあって面白いです。シウミンさんの物語とスホさんの物語が個人的にすごく好きです。これからも作者さんのペースで更新して頂けるとうれしいです。 (2020年3月17日 3時) (レス) id: 622a208a12 (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 今日初めてこの小説を見つけたのですが、とてもハマって一気に読んじゃいました。どれも狂気的で特にセフンくんのは結末に鳥肌がたちました。すごく面白かったです。これからも頑張ってください! (2020年2月27日 1時) (レス) id: d5ef40128c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nel_ | 作成日時:2020年2月2日 1時