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次の日は案の定母に医者にかかるように言われた。
捕虜の解放だなんて言ったから、気でも狂ったと思われたんだろう。
残念だけれど私は正常だし、私の意思で伝えた事だ。
医者に行ったらお茶をして食事を取って、毎晩のように行われるパーティの準備をするだけ。
同じ事の繰り返しでいい加減飽きてくるし、他にもっとやるべき事があるはずなのに。
友達もいないし、兄のチャニョリオッパは皇太子だから忙しい。
婚約者のジョンイン王子は、策略婚だからパーティ以外では会う必要がない。
そうなるとやる事や会う人はなくなって、一人で暇を持て余すことになる。
…ギョンス、見た目では私と同じくらいの歳だと思ったんだけど。
…友達に、なりたかったな。
こんな事を考えているから平和なやつだって思われるんだろうけど。
もし出会った時代や場所や立場が違ったなら…。
そんな甘いことを考えずにはいられなかった。
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街に出てみないと国民の生活がいかに貧しいかわからない。
庭は広くて手入れが行き届いているから、自分だけ住んでいる世界が違うみたいだ。
眩しい太陽の光と小鳥のさえずり、緑の匂いを運んでくる風に、戦争なんて嘘なんだと思えるくらい。
いつもは宮殿に閉じこもっているけれど、今日は少し足を伸ばしたい気分だった。
外出の予定を伝えると、すぐにお手伝いのメイドがやって来て身支度をしてくれる。
自分のことくらい自分でやりたいから、毎回断るんだけれど聞いてくれない。
「姫様、ジョンイン王子もご一緒したいそうですよ。」
「え、言ったの?私は別にご一緒しなくてもいいんだけど。」
「姫様はいつもこうなんですから…。もうお迎えにも来ているそうなので、とびきり可愛くして行きましょうね!」
いつもより張り切っているメイドにつられるように、私の気分も少しだけ上がる。
…たまにはデートもいいかな。
ジョンイン王子にはいつも素っ気ない態度を取ってしまっているし。
別に嫌いな訳ではないけれど、特別仲良くする必要も今はないと思っているから。
「姫様が冷たいーってジョンイン王子凹んでましたよ?」
目を大きく見開いて私をからかうように言った。
「もう、そんな事ないって。」
お気に入りのドレスとバッグを持って、メイドに背中を押されて庭に向かう。
もうジョンイン王子は門で待っていて、私を見るとすぐに手を繋いできた。
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ぼぷぴ(プロフ) - 貴方様が書くお話、本当に面白いです…!!今回のギョンスのお話も最高でした…いろんな意味でドキドキが止まりませんでした!!これからも応援しています! (2020年3月24日 16時) (レス) id: eb25947e96 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう。(プロフ) - 1話1話がすごく読み応えがあって面白いです。シウミンさんの物語とスホさんの物語が個人的にすごく好きです。これからも作者さんのペースで更新して頂けるとうれしいです。 (2020年3月17日 3時) (レス) id: 622a208a12 (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 今日初めてこの小説を見つけたのですが、とてもハマって一気に読んじゃいました。どれも狂気的で特にセフンくんのは結末に鳥肌がたちました。すごく面白かったです。これからも頑張ってください! (2020年2月27日 1時) (レス) id: d5ef40128c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nel_ | 作成日時:2020年2月2日 1時