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始まりそして終わり。 ページ3

嗚呼、何て暇なんだろう。
私は、あくびをしながらそう思っていた。

毎日見慣れた外。
少し、消毒の匂いがする筈の病院。

慣れすぎて、もう匂いも分かったものじゃない。
そして、真っ白な建物。

そう、私が今いるところは病院。
私は小学3年生から高校1年生の今まで約8年間いる。

通うとかではなく、いるんだ。
しかたない。不治の病にかかってしまったのだから。

我ながら不運すぎる自分に思わず苦笑する。
私は、そんなことしか出来ないんだ。

外に出たい。外に出たい…と、思うある日のことだった。

私は、何時ものように本を読んでいた。
母にねだって買ってきてもらったものだ。
文才の凄さに惚れ込んでいた。

「あの、蜂之江…伊与さん?」

と、当然声をかけられた。
多分、声から予想するに男の子だ。

私は話し相手になってくれるかもという期待を胸に顔をあげた。

「うん、そうですよ。貴方は?」

そう言うと、その男の子は少しかったるそうに答えた。

「僕は、蜂之江さんと同じクラスの佐野廉斗。
お見舞いに来たんだ。」

あ、廉斗くんはきっと、渋々来たんだ。
私は間違っていてほしいという不安を抱えながら廉斗くんに聞いた。

「廉斗くんは、渋々来たの?」

私がそう聞くと廉斗くんは少し考えてから言った。

「ううん。そんなんじゃない。自分から来たんだ。」

私はそれを聞いて安心した。
人の心は、誰も分からない。
そうと言われたのを信じるしかないんだ。

「よかった…無理矢理来てもらったのかと思った。
あのさ、廉斗くん。私のことfirst nameで呼んでくれない?」

私がそう言うと蓮斗くんはまたも、考えた。
廉斗くんは考えるのが好きなんだ。
そう思えた。

「いいよ。“伊与”ね。」

“呼んでくれた、嬉しい”という思いを隠せただろうか。
Poker faceにできただろうか。

「それじゃ、僕は帰るよ。」

と、廉斗くんはそっけなく言った。

「また、来てくれる?」

私は不安気な表情で言った。

「いいよ。来るよ。」

嗚呼、この病院生活も楽しくなりそうだ。

私の病気は。→←Configuration,



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夏目零華(プロフ) - Vodkaさん» すみません、誤字です。教えていただいてありがとうございます。同一人物です。 (2019年1月4日 9時) (レス) id: 00e741388b (このIDを非表示/違反報告)
Vodka(プロフ) - 蓮斗くんと廉斗くんは同一人物じゃないんですか? (2019年1月4日 8時) (レス) id: 3261901f92 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏目零華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/602fc8e4a51/  
作成日時:2019年1月4日 7時

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