◎渡辺くんはいつも不機嫌

□ ページ45

・


・






猫の頭を取り返す気になんてならなくて、私はそのまま空き教室を飛び出した。走って走って、とりあえず走って。顔から火が出てるんじゃないかってくらい熱くて、多分今の私顔真っ赤なんだろうな。




阿「弓木さん！」


『っ、あ、べく、』


阿「やっぱり。猫が弓木さんだったんだ」


『気付いてたの！？』


阿「うん、なんか様子変だなって思って」


『じゃあなんであの時、』


佐「あ、やっぱ弓木ちゃんが猫着てたんだー」


宮「え、じゃあ…あの時翔太に連れられてたのって弓木さん？」


岩「嘘！？俺、佐久間かと思ってめっちゃ抱きついちゃったんだけど……ごめんね！？」


深「…てか、その翔太は？」




阿部くん、佐久間くん、宮舘くん、岩本くん、深澤くん。何故かわらわらと私の周りに集まってくる人気者の皆さん。今すぐここから逃げ出したい。



『てか顔真っ赤じゃない？どうしたの？』なんて言う阿部くんに何かを言う気力もなく、とにかくこの人たちから離れないと。




渡「おい、弓木A！」


『ひいっ！』


岩「え、翔太？」


佐「スゲー形相なんだけど！？弓木ちゃん何したの？」


『私悪くない！』




佐久間くんの言う通り、物凄い形相でこちらに向かって走ってきた渡辺くんが私の腕をガッと掴んだ。はぁ、はぁ、と少し息を整えながら腕を掴む力を強くしてくるから。




渡「…弓木さん悪くないから。いいから、とりあえず来い」


『っ、』


深「おい翔太。Aちゃん嫌がってるだろ」


渡「ふっかには関係ない」


深「は？」


阿「ちょっと2人とも落ち着きなって。弓木さん困ってるから」


宮「困ってるっていうか…完全に怯えちゃってるね」




何故か睨み合っている渡辺くんと深澤くんの間でどうしたらいいか分からない私。はぁ…とため息をついた宮舘くんが、渡辺くんの背中をポンと叩いた。




宮「翔太、とりあえず落ち着きな。あと腕離してあげて。痛そうだから」


渡「…………」


阿「こんな廊下のド真ん中で睨み合うなよ。翔太、弓木さんに話あるなら静かなとこ行けば？」


深「…………」


佐「ふっかもそんな怖い顔すんなってー。お化け屋敷じゃないんだから」


「誰がお化け屋敷だ」




少しずついつもの雰囲気になる6人。ホッとしたのも束の間。渡辺くんは『2人で話したい、だめ？』とさっきとは打って変わって子犬のような顔をしてくるから思わずたじろいでしまった。









・



・

□→←□

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す