◎渡辺くんはいつも不機嫌

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『──！』


阿「あ、起きた」




がばっと飛び起きる。ベッドの横に座っていたのは、阿部くんで。なんで、阿部くん？そう思わず口に出せば、『俺、保健委員だよ』って。そういえばそうだったかも。




阿「大丈夫？翔太に引っ張られて全力疾走したって聞いたけど」


『…あれ、私の全力だったのかな』


阿「走りすぎて酸欠起こしたっぽいよ。2時間くらいは眠ってたかな」


『ずっと阿部くんがここに？』


阿「いや、ちょこちょこ翔太とかふっかが見に来てたけど」


『…申し訳ないかも、渡辺くんに迷惑かけちゃった』


阿「圧倒的に翔太が悪いから気にしなくていいよ。それより具合はどう？」


『全然大丈夫だよ。ありがとう、阿部くん』


阿「なら良かった。あ、そうだ」


『？』




『これ、翔太が持ってたやつ』そう言って阿部くんが差し出して来たのは沢山の折り目が付いた紙切れ。なんだろう、と思ってそれを見ると、借り物競走のお題の紙という事が分かった。




『、何で私に？』


阿「渡した方がいいのかなって」


『……………』



グシャグシャになった紙には『可愛いもの』と書かれていて。渡辺くんは私の事、どういう風に思ってるんだろう。胸の奥がじんわりと熱くなる。



『じゃ、俺先に行くね』と綺麗に笑った阿部くんが保健室を出て行って、何とも言えない感情だけが私の中に残った。






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