第113話 ページ36
瀬名｢なっ！？｣
大きな声を出すな。ヴァイスが人差し指を立て、ピンク色の唇に当てる。
瀬名は悪いと謝り、写真をヴァイスに返した。バッグのなかに入れ、腕を組み壁に寄りかかる。
ｳﾞｧｲｽ｢詳しいことはAから聞くといいですわ。私が話しても、意味がありませんもの｣
瀬名｢…ていうか、なんでそれを俺に言うわけ｣
ｳﾞｧｲｽ｢Aの瞳に映る貴方への視線が特別だったからですわ｣
瀬名｢特別？｣
ｳﾞｧｲｽ｢そう。自分の視界に入っている。これは本当に特別なことですわ｣
夢を掴むにあたり、あたしは大きなものを失っていった。
離れていく友人達、好敵手、仕組まれる罠に踊らされる見事にハマりあたしは闇へ落とされる。
それでも、信頼できる人が傍に居たからこそ、いるからこそ、感じるからこそ、立っていられた。
ｳﾞｧｲｽ｢Aにとっては、小さい頃から共にいるOXとミウラ。そして、兄と弟。そして何故か、貴方も入っている｣
羨ましく、恨めしく、赤い瞳が爛々と光り瀬名を睨んだ。
ｳﾞｧｲｽ｢私は貴方がとても憎いですわ。どれだけ頑張っても、私のことはAには見えていませんでしたもの｣
灰色の世界に映る色が限られる。
その中に浮かんだ色が今、
ｳﾞｧｲｽ｢忠告いたしますわ｣
壁から背を離し、互いに睨み合う。
ｳﾞｧｲｽ｢ミウラが死んだ時、Aは大きく精神を病ませていたらしいわ。OXと、兄と、そして今弟が危険な状態でありますの。Aがここにいるのは本当に奇跡と言っても過言ではありません｣
瀬名｢っ｣
ｳﾞｧｲｽ｢生きているとはいえ、心にはとても大きな傷が残り負担がかかり、グラグラと揺れていることでしょう。最後の柱｣
ひゅ！っと、ヴァイスは瀬名を指さす。
ｳﾞｧｲｽ｢貴方にもし、何かがあれば、Aは恐らくミウラが死んだような時と同じ事をしますわ。もしかしたら、もう既にギリギリを歩いているかもしれませんけど｣
瀬名｢何を、してるっていうの？｣
ｳﾞｧｲｽ｢Aに聞きなさい。忠告はしました。後は、貴方の運と、実力で是非ともAの傍らに｣
横を通り抜ける。
ｳﾞｧｲｽ｢Aと共に、勝利を掴み取って欲しいですわ｣
コツコツと消える足音。
振り向かず、瀬名は前を歩く。
守ると誓った、姫の元へと。
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月25日 10時
