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微笑に命を賭して ページ35

「…これは、何?」


わたしは、生和にかなり古い懐中時計を見せてもらった。


生「これはね…

拾った物なんだ、昔。」


聞けば、鬼殺隊に入ったばかりの頃森で拾ったものだと言う。



生「信じて貰えないかもしれないが…
この時計にはね、時渡りの力があるんだ」


「と、時渡りの…力!?」


驚いた。


確かに魔法でも使えそうな見た目の時計だけど…


正直、信じきることが出来ない。



生「そう。


僕は……一度、母さんがいた平和だった過去に戻った事がある。


この時計を使って…ね」



「過去に…」



生「数年、その時のまま幸せに暮らした…

夢みたいだったよ、また家族で暮らせるなんてさ…


…だけど、母さんが死んでしまうという未来は変わらなかった」



そう言う生和の表情は、悔しさと悲しさを物語っていた。


生「悔しくて怖くて、母さんの亡骸を目にした瞬間に元の時間軸に戻った。

時間を巻き戻せたとしても、未来は変えられない。
そう痛感させられた」


「……」



彼に、救済は無いのだろうか。



生「しけた話をしてしまったね…


だから、きみに…これを託したいんだ、A」


そう言うと、なんと生和はわたしに時計を差し出したのだ。


「え!?
なんで、どうして…!?」

生「真ん中を見て。
『壱』、と書いてあるだろ?

元々『弐』と書いてあったんだけど、僕が使ったら文字が変わった。

残り回数の事なんじゃないかと思うんだ、それは」


懐中時計の真ん中に、存在感を発揮している『壱』の文字。


「つまり……残り一回って事?
じゃあ駄目だよ!これは生和の物なんでしょ…?」


生「だからこそ、だよ

僕は…過去も未来も変えられない

なら、せめて友達のAに…これを大事な時に使って欲しいんだ」


そう言うと生和は、わたしの手のひらに懐中時計を握らせた。



「ーーーあ」



『伝令ーーッ!!伝令ーーッ!!』


生「…!!」


「(ええッ!?)」



開いた窓の縁から、問答無用で鴉がばさばさと飛び込んで来た。


『下弦の鬼共が襲来!!
下弦の鬼共が襲来!!
ただちに応戦セヨーーッ!!』


「(か、下弦…!?
……!!無惨さん!!)」


…もしかして。

ここに長居をしていたから、連れ戻そうと…?


言葉を話す鴉に驚きを隠せないが、それ所ではない。

隙を見計らって帰ることが出来れば、鬼達も引くはず…



生「…A、僕…行くね」


「…わかった。気をつけて…ね」



生和が出ていった後、わたしも…帰路を駆け抜けて行った。

絶対的至上対象→←僕の、はじめての友達



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作者名:スイ | 作成日時:2020年1月25日 22時

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