クッキーは砕け散る2 ページ36
コネシマ視点
ゆったりとした音楽に乗りながら、兄さんと向かい合って踊る。右へ二歩、左へ三歩、後ろへ一歩。カツンと軽やかな音が靴と床の間で弾けた
兄「踊れるやん。こんだけ踊れたら十分やで」
コ「いや、まあ、散々教えてもらったからなぁ、、」
兄さんはその藤色の瞳で俺を見やると、そう言いながら微笑んだ。眼鏡の奥にある瞳が細くなり、滅多に上がらない彼の口角が上がる
スーツについたチェーンを翻しながら踊る彼は、さながら風に揺れる藤の花のように美しかった
こんな人とダンスをする機会はもうないかもしれないのだから、めいいっぱい楽しまなくては
コ「、、っ」
こちらを凝視する視線の一つが殺意を纏ったことがわかり、恐る恐る視線をやる。そこには輝かしい宝石がゴテゴテと縫い込まれたドレスを見に纏ったヒロインが立っていた
ティアラをつけ、ネックレスをつけ、まるでこの会場の主役は自分であると主張さんばかりの豪華な服装に誰もが見惚れること間違いなしだろう。
そんな彼女はたっぷりのフリルがついたスカートを握りしめ、こちらを血走った瞳で見つめており、俺はその表情に恐怖を感じた
視界に彼女を入れないようにするが、それでも殺気はなくならず、居心地が悪いままダンスが終了した
兄さんに「人に酔った」と断りを入れ、そそくさと会場から抜け出す。彼が女生徒に囲まれる姿が視界の端に写ったが、そのまま外に飛び出した
申し訳ないと思うが、あのままあそこにいたところで、俺の気は休まらなかっただろう。ゆっくりと、しかし確実に歩みを進めながらどこか静かな場所へ行こうとした
ランプや花、カーテンなどで化粧をされた会場の中とは打って変わって、外の裏にある庭たちには灯りひとつない。噴水の水は変わらず吹き出しているものの、それすら月光に照らされていなければ気がつくことがない量だった
噴水の淵に腰を下ろし、真上にある月を見上げる
コ「ヒロインが、幸せになる物語じゃないんか?」
口から溢れるその言葉が、静かな庭に木霊する
俺が彼女を虐めていないから、こんなことになっているのかもしれない。いや、そもそも彼女がもっと理性的に彼らと関わりを持っていれば。彼らに好かれる努力が足りないだけなのではないか
考えるだけでドツボに嵌りそうな思考になり、俺は頭を抱えた
347人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
モトダ(プロフ) - このお話大好きです!すごく展開が気になります!主人公はずっと愛されておくれ〜幸せを祈っておきます!更新頑張って下さい! (2023年4月22日 20時) (レス) @page44 id: de8d799915 (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - すっごく面白かったです!主人公が無自覚なのも良き…!happy endを願っています!更新頑張ってください!(ご自分のペースで大丈夫です) (2022年10月30日 20時) (レス) id: ab6d207954 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - 粉雪さん» お返事遅くなり申し訳ありません、、!沢山読み込んでくださって、本当にありがとうございます!期待に応えられますよう、精一杯更新頑張りますのでお付き合いよろしくお願いいたします! (2022年10月30日 11時) (レス) id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - rimu@他力本願寺建設完了!さん» お返事遅れて申し訳ありません、、!そう言っていただけることが何よりの幸せです!少しづつではありますが、まだまだ続きますので是非ご覧になっていってくださいな (2022年10月30日 11時) (レス) @page39 id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
粉雪(プロフ) - 投稿お疲れ様です!今回もとても良かったです!内容が良くて何度も読み返しに来ちゃいます。無理せずに更新頑張ってください!! (2022年8月20日 21時) (レス) id: 81a22c2cf4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ