【d,!】自分が愛されるなんて思わないやん？２【k,n主人公】

ドーナツの行く末５ ページ34

兄さん視点

グダグダと長い挨拶が続く中、チラリと隣にいるコネシマを見た。俺より数センチほど低い彼を上から見下ろす形となり、やけに長い睫毛が彼の瞬きに合わせてパサパサと上下するのを眺める
地毛が金髪だからか、睫毛までもが薄い小麦色を纏っている。その下にある艶やかなスカイブルーの瞳は退屈な挨拶の間うろちょろすることなく司会者を見つめていた

そんなことを考えていると、辺りからパチパチとばらついた拍手の音がし始めた。ふと顔を上げれば司会者がその場で頭を下げて、壇上から退壇していく
それと同時に周りの人間たちも掃け始め、各々が自由に会場を行き来し始めた

コ「ダンスまではまだあるみたいやけど、、どうするん？」

兄「、、ん？あぁ、そうやな、、、。まあ、挨拶回りでも行こうか、コネシマ。顔広げるんは悪いことばっかじゃないからな」

そっと彼の左手を俺の右手で取り上げ、エスコートするように重ね合わせる。そのまま優しく誘導すれば、逆らうことなんて知らない雛のようにちょこちょこと俺について歩き出した
足を運ぶ度に、照明の光を弾く薄い生地がキラキラと光を帯びる。スーツであるはずなのに、身体に余裕を持たせるような作りが特徴のその衣装が、彼のしなやかな手足を惹きたてた

知り合いにポツポツと声をかければ、その知り合いたちも俺に対して応えてくれる。その時にコネシマを売り込めば、コネシマへと話題が振られた
行儀のいい家庭で育てられたコネシマは、急なことにも動揺することなく相手の質問に答えていた。今日のダンスパートナーに狙っている相手がいるのか、知り合いたちは数言交わしてから立ち去っていく

コ「兄さん、顔広いんやな、、」

兄「まあな。これでも、将来は家業の骨董品店を継ぐつもりやし、、、。顧客は多いに越したことはないからな」

コ「そうなんか。将来、な」

隣で呆然としていたコネシマの口から、ぽろりと溢れた言葉をすかさず拾っていく。元々"決めていた"返答を返せば、ふーん、と一つ息をつ。吐いたコネシマの瞳が曇る

兄「別に焦ることもないやろ。今年入学して、卒業はまだまだ先。だったら、ゆっくり見つければええ」

そう言いながら笑ってやれば、釣られたように笑顔を向けるコネシマ




お前に、その未来があればの話やけどな




『準備は整った。さあ、諸君、、、』

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