76 キムヒチョンという男 ページ41
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…これはヒチョンさんが細い手首を隠すために付けていると噂の腕時計。
ヒチョン「好きな色は、ありますか?」
『はい?』
ヒチョン「ぼくのコレクションひとつあげます」
『え、大事な物じゃないんですか?』
ヒチョン「Aにもらってほしいんです。動いてないですけど」
『これまた突然ですね』
急なサプライズプレゼント?と困惑する私を気にする様子なく、早く選べとばかりに箱をずいっと前に出される。
結局何個もある時計の中から淡い緑色の時計を手渡された。え、今日誕生日だっけ私?違うよ?
ヒチョン「ぼくのだいすきな兄弟たちを、よろしくお願いします、のプレゼントです」
『えっヒチョンさん兄弟いるんですか』
ヒチョン「……ほんとうにAはおバカさんですね」
本当にピクリとも動かない時計を腕に巻きつけていると、ヒチョンさんは呆れたように優しく頭を撫でてきた。
え…マジでどしたんすか…と顔を上げて歪めると今度はビシィッと凄い勢いでチョップされた。この人ツンデレ拗らせすぎだろ!!!
涙目で睨みつけていたらヒチョンさんは何故か切ない表情をしていて、不思議と心が締め付けられるような気がした。
ヒチョン「…あなたに会えて、良かった」
『…え』
ヒチョン「サランへヨ」
そう言ってスッと私の手をすくって手の甲にチュ、と軽くキスを落とす。サランヘヨ?愛してる??
目を細めて猫のように笑うヒチョンさんがあまりにも綺麗で、ドクドクといきなり心臓が激しく鳴り出した。
ど、ど、どうしよう。なんだこの空気感は。
『えっと、ヒチョンさん、』
ヒチョン「…今は、今は何にも返さないでください」
『…アッハイ』
言葉に詰まって口をパクパクさせていると、ヒチョンさんは私の口に手を持ってきて、しーっと静かにさせるポーズをした。
ヒチョン「また必ず会いにきます、そのときまで待ってて」
『また会いにきます…って、明日会いますやん』
ヒチョン「会いますやん、へんな日本語ですね」
ヒチョンさんは、ふふ、と楽しそうに笑い、ふざけたようにいつも通り下手くそなウィンクをして部屋に戻って行った。
マジであの人何しに来たん?と貰った腕時計を見ながらぼんやりと考える。
そしてその次の日、ヒチョンさんは辞退した。
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マァ(プロフ) - 久しぶりに読んでも楽しいし泣けました。 (2023年2月24日 11時) (レス) @page50 id: 72e8f2e0cc (このIDを非表示/違反報告)
雪りんご(プロフ) - こんにちはりんごじゃむさん!日プの新作とか出すつもりあるでしょうか??すごくみたいです!! (2020年8月13日 4時) (レス) id: d343e70c28 (このIDを非表示/違反報告)
りんごじゃむ(プロフ) - go to the topさん» こんにちは、返信が遅くなってしまい申し訳ありません!転載のお話ですがもちろん可能ですよ!!私の作品が多くの中国JAMの方に読んでもらえることを心から願っています!その際はぜひ名前の記入をお願い致します! (2020年8月9日 19時) (レス) id: 009a13994c (このIDを非表示/違反報告)
go to the top - こんにちは、りんごじゃむ先生!翻訳してからLOFTERに転載してもいいですか。中国にもJAMがたくさんので、原作者を明記するのを忘れられない。 (2020年7月10日 16時) (レス) id: d57e1e7b99 (このIDを非表示/違反報告)
rin(プロフ) - めちゃめちゃ面白くて一気に読んでしまいました!他の作品も楽しみにしています! (2020年6月28日 4時) (レス) id: 5f1fa35d0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんごじゃむ | 作成日時:2020年3月30日 18時