【夏油傑】初めまして、結婚して欲しい

47 hearts ページ47

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「政略結婚、やめようか」

「え……、待って私、」




本当にこの結婚は中身が空っぽだったの？
傑は何も、私の事興味もなかったの？
一瞬で身体の芯から冷えていくようだった。




「こんな結婚、私も君も幸せになれない」




そう言って、
傑自身も自分の薬指の指輪を外して、
二つの指輪は傑のポケットに堕ちていく。
唯一この救われないような関係の
私と傑を繋ぎ止めていたもの。





「Aは幸せでいて欲しい」

「……ぁ…、…」




頭が真っ白でどうしたらいいか、分からない。
淡々と話し続ける傑は寧ろ嬉しそう、
というか何も辛さを感じていない顔。




「あの、…ね…私、傑のこと、」

「Aのこと愛してる」

「は…、…え…？」




降ってきたのは、私がずっと
期待していた、待っていた言葉。
展開が急過ぎて、脳内の処理が追いつかない。

状況が呑み込めないうちに、
傑は片膝をついた。
小さな箱をポケットから出す。

それを開けて、ドラマで見た事あるように
私に向けて、真剣な面持ちで言った。





「 心から君を愛してる。

もう一度、私と結婚して欲しい 」





暫く、言葉が出なかった。
哀しさで溢れようとしていた涙が、
歓喜の涙に変わって、私の頬を
ぼろぼろと伝って落ちていく。




「……私も、傑のこと愛してる」




震える手で、受け取った新しい婚約指輪。
傑は一気に肩の力を抜いて、
そして、満面の笑みで私を抱き締めた。





「ありがとう、A。
もし失敗したらどうしようかと思ってたんだ」

「断るわけな、い……じゃん」




うん、ありがとう、
私の涙を拭いながら、
彼は優しくそう囁いて私にキスをした。
映画のワンシーンのようなキス。
甘い、甘い果実のように甘いキス。




「すぐ、…ぅっ…」




私は幸せだ。
初恋で、こんなに大好きで仕方ない人に
溢れそうなほどの愛を貰った。





「私は今誰よりも幸せだよ」





.作者
最後のセリフは誰が言ったのか。
私にも分かりません。

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